野菜入ってないのにタマゴ『サラダ』って法的にマズくない?

専門

コンビニのサンドイッチの具材といえば、何が思い浮かぶだろうか。自分はハムとレタスなのだが、タマゴサラダを思い浮かべる人も多いだろう。
タマゴサラダ。茹で卵を潰して、マヨネーズと和えたアレは惣菜としても人気だし、自分も好きだ。近所のスーパーではタマゴサラダのコロッケとか売ってたりする。しかしこうも思うのである。

タマゴサラダって、どこがサラダなんだ?

タマゴは野菜じゃない!!

サラダとは、生野菜を主材料としドレッシングやマヨネーズで和えた料理を指す。そう、生野菜である。
タマゴは野菜じゃない!!
ケチャップが使ってあろうとピザは野菜じゃないし、形が丸かろうがドーナツは0kcalではないし、フルーツトマトはフルーツではないし、タマゴサラダと銘打たれていようがタマゴは野菜ではないのである。
そうなると疑念が浮かんでくる。

タマゴだけで作られた『タマゴサラダ』って、法律的にマズイのではないか?

いや、タマゴサラダ自体はマズくない。美味しいのだが……具体的には、こう……名称が虚偽表示扱いになったりとか、詐欺になるとか、そんな感じで、マズイのではなかろうか。何しろ、極端に言えばこれはキュウリをソーセージだと言い張って販売しているのと変わらない。詐欺じゃない?
ということで、今回は法学部生らしくタマゴサラダは法律的に正しいのか追求してみようと思う。

食品の名前を規定する法律は?

そもそも『タマゴサラダ』という名前を、どんな法律が縛るだろう。
サラダという名称で人々を騙すから、詐欺罪だろうか?
商品の名前で人々を騙すから、商標法違反だろうか?
不当な表示で購買意欲を刺激するから、公正競争規約違反だろうか?
サラダと名乗りながら野菜を使っていないから、食品表示法違反だろうか?

詐欺罪

そもそも詐欺罪とは、何を規制する法律だろうか。

刑法第二四六条 詐欺罪
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

うーん、曖昧。
いや、法律は元から曖昧に設定することで様々な事例に対応しうるようになるので仕方がないのだが。ではタマゴサラダは詐欺罪で考えられるだろうか?
人を欺いて(タマゴだけだけどサラダと言って)財物を交付させた(購入させた)者(販売元)……うーん、当てはまってるといえば当てはまってるけど、あまりにみみっちい。だって詐欺ってほら、金をごっそり騙しとるとかのイメージあるぢゃん……

では判例を確認すれば、詐欺罪が食品の名前を取り扱ったケースがあるかどうかが見つかるはずだ。判例検索サービスを立ち上げて……

ヴァ……(断末魔)

一通り目を通したが、食品の名前について論じた判例は見つからなかった。類似の例で言うのなら『血液をサラサラにする』と謳った機械については詐欺罪で論じられていたが、食品についてはみつからない。食品の名称なんて詐欺罪の範疇ではないということだろう……

商標法

商標法は、ある商品やサービスに触れたときその商品やサービスは、誰が製造又は提供したものなのか、その商品やサービスの質としてはどのくらいのものが期待されるのかを知らしめるものである商標を保護するための法律である。
まあ、つまりはロゴである。
我々は緑色の丸の中に女神様っぽい白い人が立ってるロゴを見て、あああれはスタバだな、フラペチーノ飲みたいな、と思ったりする。もしそれが実はスタバに見せかけた別のコーヒーショップだったりすると、我々は期待はずれな思いをすることになってしまうだろう。それを規制するのが商標法だ。
スタバはあのロゴを商標法によって保護してもらうことで、パクられてお客を取られることを防止しているのだ。そしてもちろん商標を保護してもらうためには、それなりの基準を満たしている必要がある。
例えばピザに『丸いから0kcalピザ』なんて商標をつけようとしたら、品質について誤認させる名前だからアウト、と言われるわけである。

……ただこの商標法、別に義務ではない。というかタマゴサラダとかソーセージとかいう一般的な名称は保護の対象に入らない。オリジナリティのある名前だからこそ保護してもらえるのであって、タマゴ、という単語を自分だけのものにすることは不可能なのだ。

公正競争規約

公正競争規約とは、食品や家電、自動車等の販売において不当な表示や過大な景品類の提供による競争を防止する、業界ごとに定められたルールのことを指す。ただもちろん定められていない業界も存在する。
例えば果実飲料業界はこの公正競争規約を定めていて、これによって果汁10%の飲料に『果汁たっぷり』と銘打って不当に人を集めようとすることを防いでいる。つまり商品やサービスの名称を取り扱う規約なのだ。

そしてこの公正競争規約、鶏卵業界も定めているのだ!!
勝った!! タマゴサラダ問題についに決着が!!

生卵専門の規約でした……
タマゴサラダは大概茹で卵である。少なくとも生卵ではない。ダメだぁ………
やはり横着せずに食品全般を取り扱う法律を漁るべきだということか。

食品表示法

食品に関する法律というのも様々だが、食品表示法の取り締まる範囲は幅広い。というのも、食品表示法自体が安全規格に関連する『JAS法』、添加物や包装の安全性に関連する『食品衛生法』、そして健康維持や現代病予防に関連する『健康増進法』のミックスされた法律だからだ。
そしてこの内、食品の名称に関わるのはJAS法である。

『JASマーク』、というものを、聞いたことがあるかもしれない。
このJASマーク、あったら何となく安全そう、程度の認識で見られているだろうが全くもってその通りで、農林水産大臣が定めた規格に合格したものにつくマークだ。これがあると安全、というわけだ。
このJASマークの規格について定めたのがJAS法の内容の半分、日本農林規格制度。そしてJAS法の残り半分である品質表示基準制度こそ、食品の名称に関わる制度なのだ。

食品の名称は割と自由?

というわけで、食品表示法の構成要素であるJAS法、その中の品質表示基準制度を調べることで、キュウリにソーセージと名付けて販売することの是非、野菜もないのにタマゴサラダとして販売することの是非がハッキリすると考えられる。
どれどれ……

……あった!!

加工食品品質表示基準第4条の1項!!
この表の左欄の中にある商品の名前を名乗っていいのは、それぞれに対応する右欄の基準に当てはまるもののみであるという条文が存在した!! つまり、キュウリにソーセージと名付けて販売することはこの法律が規制しているのである!!

……でも、この表に入っていない食品は? キュウリをソーセージと名付けることは禁じられていてもその逆、ソーセージにキュウリと名付けることは禁じられていないではないか。もちろん、サラダを名乗るためには何%の野菜が含まれていることが必要である、という文も見当たらない。
というか、加工食品の上の表以外の名称に関する条文と、生鮮食品の名称に関する条文は共通している。

その内容を示す一般的な名称を記載すること。

これだけである。
もちろん原材料とか、原産地とかはもっと厳しく定められている。しかし誰も、誰も!! 野菜が入っていないのにサラダを名乗るタマゴサラダを断罪してはくれないのだ!! 神よ!! こんなことがあっていいのでしょうかッ!!
……まあ。一般的な名称、というからには、法廷まで持っていけばキュウリを名乗るソーセージは一般的じゃないと裁判官は言ってくれるでしょう。しかし、ああ、タマゴサラダ!! お前はもう一般的な名称すぎる!! 明らかに野菜が入っていないサラダはおかしいのに、それで定着してしまった!!
もうダメだ……おしまいだ……勝てるわけがない……

オチ

ああ、タマゴサラダ。
タマゴサラダよ。
別に食べ物に恨みはないが、私は疲れてきたよ。
サラダ。
そもそもなんでタマゴサラダはあんななりをしてタマゴサラダなんて名付けられてしまったんだ? サラダって何なんだ?

ググるか……

『サラダとは、塩を意味するラテン語salに由来する。つまり塩で味付けしたものがサラダ』

……っ!?!?!?!?!?

そうか……サラダとは……野菜とは……
法律なんかで縛られるようなものじゃなかった……

別に、野菜を含まなくても塩かかってたらサラダだったんだな……
岩塩で食べる焼き肉も……塩をかけたスイカも……土地の隅にある盛り塩も……
全ては……

全ては、サラダだったんだ……

コメント

タイトルとURLをコピーしました