VRオープンキャンパス、matterportでやるか、Clusterでやるか

VR博物館

コロナが!!
ヤバい!!

と、言われ続けて何ヵ月経ったことやら。もう半年かな?
半年経ちはしたが、ヤベーやつは未だにヤベーやつのままである。感染者は減るそぶりすらなく、大学も閉鎖されたままだ。自分の通っている大学は秋学期もライブ授業で行くことを決定した。学費ばかり一人前に取りやがって!! この通信教育!!

……しかし可哀想なのは現大学一年生、そして高校生の皆である。
現在進行形で大学生(大学生じゃない)している大学一年生の苦痛は痛いほど分かるし、待ってろキャンパスライフと意気込んでいたはずの高校生の皆も将来の指針を失って困惑しているに違いない。大学選びの基準の一つ、オープンキャンパスだけで考えてみても、今年は開かれそうにないのだから。

そう、オープンキャンパスである。
自分も色々な大学のオープンキャンパスに首を突っ込んできたが、中々あれはいい文化である。オープンキャンパス用に整えられた大学なんて大学本来の姿じゃない、なんて言われていてもだ。学食が美味しい。
だがこのコロナ禍の中にあっては、そんなことも言っていられないわけで。本来ならオープンキャンパスが旬の季節だったであろう8月も、閉鎖していた大学もさぞ多かったことだろう。
で、代わりに出て来たのが自宅で出来るオープンキャンパス、WEBオープンキャンパスの類いである。

WEBオープンキャンパス、どこまでやれる?

WEBオープンキャンパス、なんて言うとそこはかとなくカッコよく見えてくるかもしれないが、結局のところ基本的なオープンキャンパスの弱体化である。
やっていることといえば録画授業の公開、あとは精々構内の公開(激ウマギャグ)程度。当然クラブ活動の発表もろくに出来ないだろうし、学食もない。とはいえどこの大学もWEBオープンキャンパスなんて初めてなので、これは仕方がないことだ。

そんな中でも頑張ってコンテンツを増やし、魅力的なWEBオープンキャンパスを作り上げた大学の一つとして、近畿大学が挙げられるのではないだろうか。一時期Twitterでも『CLOSE CAMPUS』として話題になったアレである。もしかしたら話題になったと思っているのは自分だけで、本当はそんなことないかもしれない。

とにかく、この近大CLOSE CAMPUSは動画コンテンツに力を注いでいた。
大学OBの芸能人を呼び込み、ロボットを使用してのマンツーマンでの校内案内を行ったり、かの有名な『近大マグロ』の餌やりをライブ配信したり。

ただの授業紹介に終わらない、動画コンテンツにしうるものを全て使わんばかりの貪欲さ。きっと、高校生達にも魅力的に映ったことだろう。

しかし、動画にするだけで売り物にできるような魅力的なコンテンツが全ての大学に備わっている訳ではない。さらに言うなら、動画コンテンツがどれだけ豊かになったとしても、それは直接大学を歩く体験には繋がらないものである。
大学を直接歩くのもまたオープンキャンパスの醍醐味だ。脚で感じ取った雰囲気、空気感だって、大学選びの重要な基準なのだから。かといって近大のようにロボットを導入できる大学だって、きっと限られているだろう。
それを高校生達に提供しうるコンテンツが、VRである。

VRオープンキャンパスという試み

VR。バーチャル・リアリティの略である。……流石に皆もう知っていることだろう。
VR元年とされる2016年からはや五年、未だVRはゲームとか近未来とかそういう限られた文脈でしか語られず、毎年のように『今年こそが真のVR元年になる』なんて囁かれたりと、これまで結局オタクの道楽の範疇を出られなかった感じすらあるVRだが、このコロナ禍でとうとうスポットライトが当たった!!
そう、自宅にいながらにしてバーチャルな空間を、自分の脚で動くことができるという点で、VRはステイホームと相性バツグンだったのである。

自分もこのVR技術、バーチャル技術の発展には目をつけていて、これまで二種類の異なる方向性のVRについて記事にしてきていた。

360度パノラマ写真を継ぎ合わせて、現実の空間をVRに持ち込むmatterportと。

VR博物館
クイサレ matterportを使用した博物館系VRのレビュー群。 みんなに読まれている記事 VRオープンキ...

空間を一からモデリングして世界を作り、それを共有するバーチャルSNSのClusterだ。

Cluster
「Cluster」の記事一覧です。

どちらも家にいながらにして、バーチャルに生成された空間に脚を踏み入れることが可能である。当然コロナの心配はない。電波越しには病は伝染しないのだ。
そして既にいくつかの大学は、これらのVR技術を使ってキャンパスを堂々とオープンしているのである。

matterportの場合

先に述べたように、matterportは写真を継ぎ合わせてバーチャル空間を作り、その中を移動することが可能であるという技術である。

matterportの強み
・実写のリアリティがある
・立体的に建物を見られる
・写真を撮ることで作られるので手間が少ない
matterportの弱み
・立てる足場や視界の拡大に限度がある
・写真なので後から加工が効かず、オープンキャンパス用のmatterportはオープンキャンパスにしか使えない
・写真で作られているので映像に対応できない

大阪大学大学院情報科学研究科

このmatterportを使用してオープンキャンパスを開いた大学の一つが、大阪大学大学院情報科学研究科だ。

Explore 大阪大学大学院 情報科学研究科 オープンキャンパス学科紹介 in 3D
Matterport 3D Showcase

……いきなり大学というか大学院の話になってしまったが、流石は情報科学研究科と言うだけあってVRにも意欲的なのだろう。
この大阪大学大学院情報科学研究科は、matterportを大学紹介のプラットホームとして利用しているようである。

教授陣のコメント動画にアクセス出来るようにしてあることや、校舎内のショートコメント、そして中庭にmatterportが接続してあることからも、普段の構内を見せる姿勢が伺える。

日産京都自動車大学校

matterportを使用している大学は他にもある。日産京都自動車大学校だ。

Explore 玄関 / 学生ホール in 3D
日本最大級の実習設備 自動車エンジニアに不可欠な最新の設備・機能を備えた日本最大級の実習設備。 校舎棟も実習棟も冷暖房完備の快適な環境で、最新の技術を習得できます。.
Explore 自動車整備科エリア in 3D
日本最大級の実習設備 自動車エンジニアに不可欠な最新の設備・機能を備えた日本最大級の実習設備。校舎棟も実習棟も冷暖房完備の快適な環境で、最新の技術を習得できます。.

……ここもまた、大学校であって大学とは違う括りなのだが、許してほしい。叩かないで。
この日産京都自動車大学校の方は、より学校を『魅せる』ことに力点を置いている。ように思える。

整然と整えられた空間に、日産自慢の技術の粋を並べている様は最早モーターショーにすら近い。
運転席に座れるようにしてあったり、レースで活躍した車が最初に視界に入るように視点を配置してあるところからも、より魅力的に学校を紹介しようとする気概が感じられてくる。

Clusterの場合

さて、写真を使用するmatterportと違い、一からバーチャル空間を作り上げるのがClusterである。……いや、作り上げたバーチャル空間を共有する場がClusterである、とする方が正しいか。どちらにせよ、Clusterは共有手段として優秀だ。

Clusterの強み
・直接、好きなように空間の移動が可能
・映像、音声の使用やワールドの改造も思いのまま
・出来上がった空間には人が複数入ることも出来るので擬似的に複数人での授業も可能になる
Clusterの弱み
・matterportと比較してデータが重いので、スマホやパソコンによっては満足に扱えない
・写実的なリアリティに欠ける
・ワールドを一からモデリングするのでとにかく手間がかかる

法政大学小金井キャンパス

このClusterを使用して、大学の構内を公開している大学の一つが、法政大学小金井キャンパスである。

法政大学 バーチャル小金井キャンパス|バーチャルSNS cluster(クラスター)
3Dモデリングで再現した「バーチャル小金井キャンパス」です。バーチャルSNS「Cluster」から空間に入り、キャンパス内を自由に探索することができます。制作: 法政大学 実世界指向メディア研究室 学部生有志

法政大学小金井キャンパスは、なんとキャンパス全体をモデリングしてしまったトンでもない大学である。校舎を作り、中庭を作り、所々に隠しアイテムすら置いてある。

さらにリアリティに欠ける点の対策として各地に実写3Dビューポイントを置いたり、広い構内を歩き回る手助けとして手持ちマップやワープポイントまで完備。至れり尽くせりだ。キャンパスを歩く、という感覚を味わうには最適な形である。

とはいえ、外は凝りに凝っているのだが、流石に校舎の中にまで手をつけることは出来なかったらしい。法政大学の校舎の中に入ろうとしても、青い壁に邪魔される結果となった。

東京音楽大学中目黒・代官山キャンパス

校舎の中に入ることができるClusterオープンキャンパスが、東京音楽大学中目黒・代官山キャンパスである。実際は東京音楽大学付属高等学校のオンラインオープンスクールで使用されたらしい。

東京音楽大学中目黒・代官山キャンパス|バーチャルSNS cluster(クラスター)
2020.7.18-19オープンスクールで使用された、東京音楽大学中目黒・代官山キャンパスです。

まあ、じっさい部屋を一つ一つ作るのは大変な労力を要するので、校舎の中身を作ったというよりは箱に入れるようにした、という方が近かったりするのだが。
しかし実際に食堂(とおぼしきエリア)には椅子が並べてあり、複数人使用によって擬似的にキャンパスライフを体験することができる仕様になっている。

まとめ

以上のように、既に幾つかの大学はVRを活用しオープンキャンパスを開催している。matterport、Cluster共にメリットデメリットが存在するが、使用用途に応じた使い分けが求められるだろう。
どちらがより優れているかというと……個人的には、現状は手軽さで勝るmatterportが良いと考える。VR革新機構さんのようなmatterportに慣れた業者に頼めば、新しいことを学ぶ必要もあまりないだろう。しかしこれからモデリング技術が普及、人手も増えたなら、勢力図も変わっていくはずだ。

残念ながら、どうやらコロナ禍はまだ収まってくれそうにない。きっともうしばらくは、オープンキャンパスを開いて構内に高校生をどっと迎え入れることはできないのだろう。
だからこそ、是非、より多くの大学に、VRを使ってもらいたい。それはきっと次の学生たちのためになる。

……まあ、もうこれからは大学の箱が意味を為さない、為せない時代がやってくるという最悪のパターンも、割りと現実味を帯びてきたのだが。
そうならないように、祈るばかりである。

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