M・ナイト・シャマラン監督の最新作『OLD』。1日で50年が経過するビーチを舞台したスリラー作品。
筆者は幼い頃に『シックス・センス』を観たおかげで幽霊に対する恐怖感が薄れ、少なからず救われた。だからシャマラン監督は印象に深い監督の一人だ。
今作はテーマとメインビジュアルで飛びついた。絶対面白いやつじゃん。
結果やっぱり良い作品だった。十分に気持ち悪い作品。本編前にシャマラン監督出てきて驚いた。
物語導入としては理解しやすく、
- ホテルのオーナーにプライベートビーチを紹介される
- 出ようとすると意識を失うためビーチから出られない
- ビーチでは急速に時間が経過する
といった感じ。
次々とイベントが起きるため飽きが来ないのが凄いところ。『急速な時間経過』というテーマひとつで色々なアイデアを魅せてくれる。
その反面、イベント間の繋がりは重視していないようで淡々としている。何かが起こる→皆を呼ぶ→解散する→何かが起こる、みたいな感じ。
それでもアイデアは面白くて、時間経過による成長や老い、精神の変化が中心に描かれている。
6歳の少年はむさい青年になっちゃうし、11歳の少女は成長して無自覚に胸揺らしまくってる。おそらくこれはギャグ。
個人的には身体年齢に精神が付随する様が好みで、脚本から思想が見えるのが良い。外的変化というのは現実に「気づいたら変化している」方が多いけれど、これに準じて成長/老衰による変化は場面転換による撮り方が多い。急速な時間経過を印象づけるためにCGを活用して身体が成長する様を見せるといったことはしない。これを現実に沿わせているから一層怖く感じた。時間経過を恐怖の対象として見るだけでなく、それによって救われるものも描かれており優しさを感じる。
内面を重点に描いているせいでテーマに対して派手さはない。長回しのゆったりとしたカットも特徴的で多い。その点で何だか低予算という印象も受ける。ビーチ全体をセットとして作っているからそんなこともないのだけれど。
筆者は超常現象に明確な原理を示してしまうのは嫌いだ。原理を理解した上位者が存在する時点でそれは超常現象ではないからだ。だから現象の原因とかはぼかされている方が良い。また、上位者/観測者の行動原理にも世界征服だとか腑抜けたものが無いのも良い。だから本作のオチは納得できるものであるし、現社会問題へのひとつのアンサー、ただし倫理観はない、といった感じで好きな部類だった。
ネタバレは極力したくないが、どうしても書きたいのでひとつだけ。
役者の迫真の演技を遠方で監督が撮影してんだよ、作中内で。面白すぎる。
映画館で観る映画としては些か地味ではあるが、扱っているテーマ的に今観に行って損はない。
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