課題で算術オーバーフローの対策部分を考えていた。桁溢れが起こると値がマイナスに振り切れてしまう。そんなとき土曜日に友人から薦められたので『大怪獣のあとしまつ』を観てきた。
「怪獣の死体また二次災害をどう処理するか」というコンセプトは面白くて、空想科学読本のようなワクワクを期待した今作はM78星雲へと飛んでいってしまった。
まず根本的に後始末できていない。「どう処理するか」を実写で画にするから面白いのに全部会話で言い合っているだけで手段を講じず画が映えない。なんで映像媒体で強いCGがあってこれをサボるのか分からない。
「〜したらいいんじゃないか」の程度も低いうえに各省庁の大臣にやらせるものだから尚酷い。国益を左右する会議は大臣だけで酒飲みながらやるらしい。無能というより馬鹿にしていて風刺とか皮肉にすらなっていない。
ガヤガヤ死体処理を押し付け合う短い尺で観ている側をイライラさせるセンスには光るものがあるので、これをシリアスだったりリアリティのある方面に振って表現の幅を持たせることができれば強そう。
でもこの会議室で寸劇やってる尺が長くて事あるごとに挟まるせいでテンポが余計に悪い。怪獣から出るガスの臭いが排泄物なのか吐瀉物なのかとかどうでも良いことばかりで話が進まない。ジャンルがコメディだとしても、見たいのは怪獣の死体処理のエンターテインメントでリアクション過多な大臣の下ネタじゃない。
ただ特務のラップトップがThinkPadだったのは好き。
防護服とか「着ないなら着ない」と独自のリアリティラインが定まっていれば観やすいものの思い付きで変わるから目につく。きのこが問題になっても回収しないあたり、序盤で怪獣の体液浴びてるシーンは忘れてそう。巨体から出る熱を語った後に怪獣の上でリポートしたり、兵器で傷がつかないから解体できなかったはずが流水で穴が空いたり、ミサイルを止めなきゃと言いながら主人公に会いに行ったり、怪獣から発生するガスは可燃性じゃなかったりとズレが多くある。
現実的な解決手段でトライアル&エラーをすることはなく、序盤で氷漬けにしようとするのもシン・ゴジラを意識したのだろうけれど、専門家なしに独断先行しているだけで成功するかもといった期待感がない。今作全部同じで『成功しそうな手段』が失敗するのではなくて明らかにダメな方法で四苦八苦している。
撮影はCG全般強いんだけど、冒頭の空撮が微妙にピント合ってなかったりブレが激しくて少し酔ったりした。シン・ゴジラ風のテロップは映像に動きがある中でエフェクトかけながら動くから見づらくて仕方がない。
オチは中盤に主人公が光に包まれた回想とキスシーンのシャツの文字で悟ったけど、最後にウル○ラマンのパチモンを出さないのは日和った感がある。どうせなら振り切ってしまえば良かったのに中途半端。
結局人智の外側で解決するならコンセプト崩壊していないか。ウル○ラマンが倒した怪獣の死体は資源回収に来るのを期待して放置するのが正解らしい。「最初から変身して持ち出せば解決したじゃん」に対する明確な返しがなくて、本編の大部分が茶番になった感じがする。あとデウス・エクス・マキナに人間がなるのは自己矛盾を感じるけど、そこはどうなんだろう。
唐突だが丸く収まった風に流れる壮大な音楽に「このテンションに流されてもいいかな」と思い始めたタイミングで音楽ブチ切って茶番が始まった。意地でも余韻に浸らせないようにしてくる辺りは隙がない。
どうやら予算半分で続編シリーズ『大監督のあとしまつ』が公開されるらしい。続編アピールを組み込んだ上で興行収入で爆死した三木聡監督がプロデューサやスポンサーに熱意を伝染させて続編を完成させる物語だったら観に行くかもしれない。
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