昨今の情勢から、出歩くこともはばかられつつある中ではあるが、西尾城の桜を見ずに去るのも耐えかねて、ついにカメラ片手に飛び出した次第である。
今回使用した機材はこちら
御覧の通りである。木板で作られた台場は例年ブルーシートで埋め尽くされ、大勢の人々で賑わうはずだった。
しかし今年は見渡す限り誰もいない。近所の通り掛けの高齢者や子供たちが腰を掛けてはいたが、そこに居合わせたから、といった感じで花見をしており、長くとどまっているつもりもなさそうだった。
これがその理由である。花見さえも、「社会的距離」の対象になっている。現に西尾市は投稿日現在市内で3名の感染が確認されており、この警告は脅しでもなく真実味を帯びている。
北浜川から西尾城に向かうと、途中に尚古荘という庭園付きの邸宅がある。普段はコスプレイヤーなどで賑わうここも、臨時休館である。
西尾城への道中に西尾小学校がある。ちょうど入学式が行われた後のようだった。翌日には愛知県も小中高校休校が延期され、華々しい入学を終えた一年生たちは不安の募る春先を過ごすことだろう。
写真の奥には、西尾城のある広場がある。
道を抜けると、石畳に咲き誇る桜が出迎えてくれる。普段なら、ちょうどこの時期に西尾城一帯でコスプレイベントを行っていたりして、なにかと人の絶えない場所だったはずだが、御覧の通りである。桜に視覚があったなら、きっと人類が衰退したのだと思っているだろう。
西尾城の敷地内には、旧近衛邸跡と呼ばれる木造建築と庭園がある。普段は茶屋になっていて、城を臨みながら西尾の抹茶を楽しむことができる。しかしここも、同様の理由で閉館していた。
2週間ほど前に来た時には「満開になったときにまた来たいなあ」などと思ったが、それは叶わなかった。
せめてもと思い柵の近くの枝垂れ桜を見た。
そしてようやく、西尾城を臨む資料館前にやってきて、堀越に桜と城を見た。ああ来てよかったな、とふと思った。
全体像がこちら。ふと頭の中で、宇多田ヒカルの「桜流し」が流れる。
頭を上げれば、桜はいつものように咲き乱れ、散っていく。喧騒も人だかりもコスプレもないが、見上げた景色だけは、いつまでも変わることはないのだな、と思った。
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