ミラーレスの時代に生まれ変わったツァイスプラナー。Planar T* FE 50mm F1.4 ZAレビュー

4.5
レビュー
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開放からシャープな、現状最高峰のプラナー。

積雲
積雲
先月、Planar T* FE 50mm F1.4 ZAを中古で購入しました。α7Ⅲで撮った作例とともに、この素晴らしいレンズの魅力を語っていきたいと思います。

ミラーレスだからできる、考え抜かれたレンズ構成

Planar T* FE 50mm F1.4 ZA(SEL50F14Z)はソニーEマウントの50mm前後の純正単焦点レンズとしては最も明るく、重く(778g※製品ページより)、高価(中古で13万~、新品で15万~、2019年9月現在)なレンズです。

そもそもプラナーとは古くから用いられてきたレンズ構成の一つで、前後対称のダブルガウス構成と呼ばれるものの一つです。詳しい解説はPhotoYodobashiの記事に任せるとして、本レンズの特徴を見ていきましょう。

SONYがツァイスの名義のプラナーの50mm単焦点レンズを出すのは実は2度目で、最初のレンズはAマウント用のPlanar T* 50mm F1.4 ZA SSM(SAL50F14Z)でした。まずは両者のレンズ構成を比較してみましょう。

Planar T* 50mm F1.4 ZA SSMPlanar T* FE 50mm F1.4 ZA

左がSAL50F14Zで、右が今回レビューするSEL50F14Zです。一見すると全く違う構成に見えるかもしれませんが、じっくりと構成を観察していくと、このレンズの狙いがわかります。

まずSAL50F14Zは純粋なプラナー構成になっていて、前後対称な構成です。それに対しSEL50F14Zは最初の6枚は前後対称で典型的なプラナーの構成をしていますが、その後方にさらにレンズ群があります。

実はこれこそがこのレンズがタイトルで述べたように『ミラーレスの時代に生まれ変わった』と呼べる所以なのです。

ミラーレスはフランジバック(レンズマウントとセンサーまでの距離)を短く設計できるという利点があります。一眼レフカメラではファインダーに光を通すために必要だったミラーを設置する空間が不要になる分、レンズとセンサーを近づけることができるわけです。

その空間を最大限に活用したのがこのレンズなのです。つまり、古くから使われているプラナー構成を前方に置き、後方のレンズ群でさまざまな収差を徹底的に補正する。結果として、プラナーのもつ画面の均一性を発揮しながら、解放からシャープな像を結ぶという、これまで両立しなかった二つの要素を兼ね備えたとんでもないレンズが出来上がったわけです。

一眼カメラの高画素化が進む今、オールドレンズをただ復刻するだけでは意味がない。現代に通用するように徹底的に再設計してやろうという技術者の熱意が伝わってきました。

・ミラーレスの短いフランジバックにより空いた空間に補正光学系を搭載し、収差を徹底的に排除
 →解放から画面全体が平坦・均一でシャープな描写、高画素化に対応

外観


うーんデカい。でもフード込みだとかっこいい。

作例

設計思想からして、このレンズ、開放で撮りたくてたまりませんでした。なので作例のほとんどはf1.4、開放で撮影しました。なお全ての作例はImaging EdgeによりRAWファイルを撮影時の設定でjpgに出力したものになります。

※すべての作例はクリックすると原寸大(Google Drive)にジャンプします。

動物


まずはこの一枚から。開放でありながら鳩の目にピントがすばやく合焦し、キレキレの描写を見せています。下の砂利の描写を見れば、その鋭い描写がたとえ画面の隅であっても失われていないことがわかります。そしてこの場面ではうるさくなりがちなボケは極めて自然で、被写体を見事に浮き上がらせています。一目見ただけで立体感が迫ってくる、まさにそんな描写をしてくれます。


50mmは注視しているときの画角だといわれています。開放できちんと狙ったところにピントが来れば、まさに”注視”しているかのような画が撮れます。それにしても前ボケ・後ボケともに癖がなく扱いやすい印象を受けます。

餌やりの皿に飛びつこうとする鳩。動きの激しい被写体でありながら鳩の眼に合焦してくれました。背景を見れば、ややグルグルボケの傾向がありますが、ポートレートではむしろ被写体を浮き立たせる武器にもなります。


ベランダに上がってきた猫をパシャリ。下宿周辺の猫はどうやら人懐っこいようで、この威圧感のあるレンズを向けてもお構いなし。ファームウェアアップデートでα7Ⅲ、α7RⅢに追加された動物瞳AFが炸裂して、手前の眼にばっちりピントが来ています。背景の柵の奥に行くにしたがって溶けていくようなボケは圧巻です。柔らかな毛並みの表現力にも目を奪われます。


猫からもう一枚。こちらは警戒心が強く、なかなか自然な姿を見せてくれませんでしたが。開放の際の癖がよくわかる一枚です。周辺光量落ちは見られますが、実に情緒のあるボケをしてくれます。言ってみれば、存在を描くレンズ、という表現がしっくりきそうです。

玉ボケ


開放での口径食を見ると、端に行くにつれてレモン型に移行していくのがわかります。1・2段ほど絞れば改善し、11枚の絞り羽のおかげでf/2.8まで絞っても玉ボケを楽しめます。玉ボケの中身は年輪などもなく綺麗ですね。


50mmという焦点距離は、時には狭いと感じるものです。そんな時は縦構図を試してみましょう。少し絞って、流木の根元にピンを置きましたが、それにしても波打ち際、迫りくる波、はるか向こうに輝く雲、すべてを緩やかに広がるボケの中で受け止め、濃厚に描写してくれているではありませんか。


海のカットからもう一枚。開放では周辺光量落ちが見られますが、このように重厚な雰囲気を出したいときにはむしろ”アリ”でしょう。釣り人に迫りくる波をクッキリと描写しながらも、地平線へと遠ざかるにつれなだらかにぼやけていきます。風景撮影では絞るのがセオリーですが、ここではあえて絞り開放で撮ることで、波内際・釣り人が際立っていますね。


先ほども触れましたが、50mmという焦点距離は縦構図にすると案外広角っぽく取れます。曲がりくねった流木とはるかな空に浮かぶ月、両方を一枚の写真に収めることができました。この組み合わせ、なんだか違う惑星に来たみたいだと思いませんか。

街角スナップ


この重たいレンズをスナップに使えるのか。答えはYESです。この一枚を見ればわかりますが、AFはきちんと意図した被写体に合焦しますし、床面や照明のなだらかなボケが生々しい臨場感を生み出しています。


建物写真には画角が足りませんが、ある程度離れて縦構図を構えれば、まとまりのいい画が撮れます。それにしても空の青と雲の白、それを反射するビルのガラスが見事に描写できています。もう少し絞れば周辺光量の減少がなくなってよかったかも。


気前のいいケバブ屋さんが一枚撮らせてくれました。50mmF1.4といえば、ポートレート撮影に最適なレンズだと思う人も多いのではないでしょうか。ピント面のコントラストが高く、被写体が背景から見事に浮き上がっています。肌色も極めて自然で、左端のケバブも実に美味しそうに映っているではありませんか。ポートレートでは重要なコントラストと色再現の両面で最高級の写りをしてくれます。ちなみに彼もカメラが好きでNikon派だそうです。


ふと立ち止まって見上げた、変哲もない看板も、このレンズにかかれば途端にエモーショナルな被写体に。この看板を”見上げた瞬間”をまさに表現しています。


スナップ的な一枚。商店街の入り口に佇む案内板を撮ってみました。やや逆光気味ですが、アスファルトも含めて白飛びや黒飛びをすることなく、程よいコントラストで捉えられています。

夕暮れ・夜景

夕暮れ、太陽が沈んだ直後の一枚です。ピントはだいぶ奥に合わせたので、手前側の前ボケがなだらかに表れています。少しアンダー目に撮ったこともあって、なかなかアンビエントですね。

明るいレンズですから、夕方・夜に使いたくなりますよね。ここではあえて置きピンをして過ぎ去る電車を狙ってみました。SSが遅すぎて電車はブレてしまっていますが、夕焼けとそれを反射する線路・電車が実にうまく描写されています。さらに開放なので、奥に行くにしたがって違和感なくぼけています。夕暮れ時の電車といえば、仕事終わりの会社員の郷愁のようなものを感じさせますが、この一枚は会社員そのものは写っていないにもかかわらず、それが見事に表現できているのではないでしょうか。

夜景撮影ではF1.4の明るさが光ります。木々の色やディテールの再現を見れば、低照度下でも表現力は全く色あせないことがわかります。開放でもシャープだからこそ、遠景にも遠慮なく絞りを開いて使えます。

街灯に照らされている街道の枯れ葉をふとしゃがんで切り取ってみました。どうでしょうか。暖色の光と、枯れ葉の茶色が相まって、鮮やかな反射を生み出しています。また溝から生える雑草もなんと鋭く描写されていることでしょう。うーん、とってもノスタルジー

ブツ撮り

このレンズ、実はブツ撮りにも向いているんです。50mmということで余計なパースがつかないことに加え、大きくボケるので背景と被写体を分離しやすいのです。一枚目の梅の油彩画のような後ボケは圧巻です。余談ですが二枚目の被写体になっている小説『三体』は中国発のSF(!)でとっても引き込まれる作品でした。その気になったら書評記事を書いてみようと思います。

使用感

さすがにフード込みで800gを超えるレンズとあって、取り回しはよくありません。スナップ撮影に気楽に持ち出そうという気には全くなりません。

でかい・重い

また、僕はフードをつけっぱなしで使っています。(塵が入るのを防ぐため、あとかっこいいから)フード込みだと向けられた側はレンズに威圧感を感じるのではないかと思います。撮り手もそれをわかっているので、おいそれと被写体、特に人間には向けづらいという欠点があります。

AFの速度は十分ですが、ワンテンポ遅い感じがします。ただ追従性には問題はないので、おそらくAFを動作させるまでが遅いのではないかと思います。

ただこれらの欠点を差し置いても、出てくる画がすさまじく綺麗なので、このレンズを購入してから一か月、このレンズをつけたままで運用しています。気づけば片手でも持てるようになってきましたし、覚悟を決めればスナップにだって使える気がしてきました。完全にこのレンズの魅力にハマっています。

蛇足:そもそもフルサイズ機に安くて軽いレンズをつけてて意味があるのか。

フルサイズ機を買う理由として、解像感が高い/よくボケる/高感度・ノイズに強い などが挙げられますがぶっちゃけAPS-C機+良質なAPS-C用レンズ(それでも安いフルサイズレンズぐらいの値段)とフルサイズ機+安いズーム・単焦点を比べるとAPS-C機の方が良い写り(解像感や高コントラスト)をすることがしばしばあります。

これはなぜかというと、APS-C機ではセンサーが小さい分、十分な光学性能を達成するためのレンズは小さく、安く作ることができるからです。もし同じ値段・重量でフルサイズ用のレンズを作ろうとすれば、どうしても光学性能は妥協せざるを得ないのです。

これを理解していないとせっかくフルサイズに乗り換えたのに、撮れる写真が劣化したという現象が起きます。これは実際に僕もNikon D3200からα7Ⅲのレンズキットに乗り換えたときに体験したことです。

フルサイズミラーレスを各社が投入しましたが、フルサイズらしいキレキレの描写を撮りたいならば、ボディだけでなくレンズにも相応の投資が必要だと覚悟しなければならないと思います。

まとめ

最後に、このレンズの良い点悪い点を挙げておきたいと思います。

・開放からピント面はシャープで高コントラスト
・ボケが綺麗
・ポートレートに最適
・夜の撮影にも使える明るさ
・実はブツ撮りに向いている
・とにかくうっとりする描写
・フードつけると形がかっこいい
・高い(中古でも13万円~)
・重くて持ち出すのが億劫
・フードをつけると威圧感がある
・人に向けにくい
・AFがワンテンポ遅い
積雲
積雲

個人的には大満足のレンズでした。これからも旅行とかに頑張って持ち出していきたいと思わせてくれる、そんなレンズです。

 

 

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