昨日NHKが取り上げた『ファスト映画』
危機感を募らせるだけ。ある種の害悪記事。
問題提起に関しては「よくぞやってくれた」とも思ったが、何せ『ファスト映画』の定義が曖昧で雑。無差別攻撃と大差ない。
曖昧なせいで未知の作品への足掛かりにもなるレビューを萎縮させている上、反応としては各人が嫌悪するものを『ファスト映画』と定義して叩いてる始末。
調査を行っている以上は違反とする指標があると考えられるが、それを書かない。収益化していなければいいのか、作品の内容全体を語らなければいいのか、結末さえ語らなければいいのか、権利者の削除申請に応じる記載を概要に設ければいいのか。どれも明確にしようとしない。
仮に画像/動画の無断使用を指標にすれば可視化はできる。一方で出典を記載していた場合は引用の尺度が問題となるが、これは「公式サイトの画像やPV映像はOK、他本編映像はNG」のように提示すれば安心して引用できる。そうすれば無闇やたらと萎縮させずに済む。
それっぽく弁護士の考えも書かれているものの「相当な量」「ほぼすべて」等とぼかしている。そもそも権利者が訴えた上での論点だ。そのうえで「疑いがある」に留めている。『ファスト動画』=「違法」とは言っていない。冒頭で主旨をミスリードさせる構成には一周回って尊敬の念を覚える。
記事に対する反応として「ファスト映画では映画の良さは伝わらない」といったものがある。これには全面的に賛成だ。ただし後ろに「だから投稿者も視聴者も悪」といった論調が続くものは除く。意味がわからない。
「映画の良さが伝わらない」ことを前提とすると「ファスト映画を見ると映画本編を見ない」といった意見は出ない。別に痛くもないなら放置すればいい。投稿者や視聴者を叩くのはナンセンスでしかない。
昨今の需要として「受動的にエンタメを摂取して満足できる媒体」として『ファスト映画』が挙げられるのだろう。収益の有無を論点にするならば『ファスト映画』という動画コンテンツに留まらず「【映画タイトル】 ネタバレ」で検索すると出てくる広告有りのサイトも該当する。しかし、そちらは取り上げられていない。ネタバレを摂取する時間だけで言えば動画視聴よりもネタバレサイトを閲覧した方が早い。だが需要は動画コンテンツにある。これは目的の映画タイトルなしに『おすすめ』といった形で多くの未知作品を摂取できるYouTubeの特異性があるためだ。
これを仮定すると、視聴者は『ファスト映画』で見た作品を当初は映画本編で観ようとしていたと考えにくい。それだと直接的な被害は少ない。飛躍して「映画業界の衰退の当てつけだ」と勘ぐる者も出てくる。定義の曖昧さがCODAの示す危機感を薄れさせている。
推定被害額でしかない950億円という数字も記事冒頭ではあたかも事実であるように、
この1年で950億円余りの被害が確認され、団体は投稿者の特定を進め、法的な措置に乗り出しています。
出典:NHK WEB 「ファスト映画」投稿急増 映画産業界に危機感 法的措置も
URL:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210620/k10013094761000.html
と断定していることからも質の悪さが滲み出ている。
これを機に参考にしている映画レビュアーが紹介記事や動画を削除また新規投稿の停止等を行うかもしれない。視聴者が「あなたは該当しない」といっても当人が恐れているのは権利団体であって他の言葉は慰め程度にしかならない。映画好きで生真面目な人ほど馬鹿を見るかもしれない。
どれも憶測に過ぎない。だがこの問題提起の仕方を素直に呑み込めそうにはない。
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