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まえがき
スマホカメラの開発競争は年々激化しています。Samsungは8Kビデオ収録に対応。iPhoneは10bit動画に対応。そしてシャープはついに1インチセンサーを搭載するに至りました。
しかしこんなにスマホカメラが強くなっても、依然として「ボクもうスマホで十分だから一眼売ったよ。」みたいな人が全然いないのは何故なのか。
答えはスマホカメラを絶対的に制約する、『コンパクトな光学系』という縛りです。スマホは結局携帯なので、一眼のような巨大な光学系を内蔵することができません。
巨大な光学系が生み出すもの。それは視力を超えた超望遠の世界。あるいはとろけるよう被写界深度。いわゆる被写体前後のボケですな。そういったものはおそらく今後スマホカメラがどれだけ進歩しても得られない領域です。
しかし一方でこと「動画」という分野においてスマホは一眼レフ、ミラーレスの先を行きます。最安の現行iPhone12が約7万円台。動画機能を見ると4K60fpsを撮ることができます。これはiPhone Xからの標準機能ですが、カメラ市場を見ると4K60fpsを撮れるカメラは限られます。あのソニーの動画むけミラーレスのα7iii(17万円ぐらい)でさえ非対応。対応カメラを新品で手に入れようものなら、レンズも込みで30万円は下りません。スマホの動画機能はその価格に対してあまりにも優れ過ぎています。
そこであるアイデアが浮かびます。「スマホの優れた動画機能で、一眼レンズの光学系を通じて撮影できないのか」
やはり考えた人はいました。意外にも基本的な構想はスマホよりもはるか昔の、フィルム動画時代に実現されていました。
当時映画のスタンダードだったのはSuper35mmというフィルム規格。とてつもないデカさのフィルムをとんでもないデカさのカメラにつけて、写真のハーフ版と呼ばれる規格とほぼ同じサイズで贅沢に使用したものでした。写真と同じ規格なので、映画はまるで写真のようなボケや解像度を映像として使用することができたのです。
しかしアマチュア動画作家はそんな贅沢はできません。8mmフィルムと呼ばれる遥かに小型の規格で撮るのがやっとだったのです。カメラは小さく、レンズもフィルムの撮像面の小ささに合わせて小型のものが主流でした。ちなみにあの庵野秀明もこの8mmフィルムで撮っていました。
先程のアイデアと同じく、8mmフィルムでSuper35mmの光学系を使用して撮れないのかというアイデアははあり、それはDoF(被写界深度)アダプターという形で実現していました。
仕組みはこうです。DoFアダプターはレンズのつけられるただの筒のように見えますが、本来ならフィルムがある場所には擦りガラスが付いています。そしてそれを裏から覗くと、上下左右反転した像が写ります。その後ろに8mmカメラのレンズを付けることで、一眼レフのファインダーをそのまま撮影しているかのように写ります。現像ののちに再度上下左右反転させれば正像に戻り、まるで映画用カメラで撮ったかのような映像を撮ることができたのです。
この仕組みの欠点としてはすりガラスの汚れが目立つことや、光量落ちが発生するため暗所での撮影が難しい点などがありましたが、映画のような映像を目指していた当時の映像作家にはとても魅力的と感じたことでしょう。
話を現代に戻すと、全く同じことをスマホでやろうというのが、この『BEASTGRIP DoFアダプターMk.2』なのです。
前書きが長くなりました。
これは何?:スマホカメラで一眼みたいな写真や映像を撮るためのアダプター
いくら?:約4万円(必須のケージも含めると5.7万円)
好きなところ:スマホカメラの底力を引き出してくれるところ。
好きじゃないところ:レンズを絞るとすりガラスの溝が目立つ点。上下左右反転ビューを実装しているアプリの少なさ。
作例(動画の切り抜き)
結論
結局一眼は要らなくなったのかというと、それはNoといえます。やはりまだ静止画の画質としては足りないものがありますし、渦巻き模様問題もあります。また現状まともにビューを見ながら使える静止画カメラアプリがないので、静止画メインの人は一眼をキープした方が良さそうです。
でも動画勢は正直もう要らないんじゃないかと思ってしまいましたね。特にV-Log用途。動画であれば画質は十分過ぎますし何よりサッと撮ってさっとSNSにあげるぐらいならこれで十分過ぎますね。いちいちSDカード抜いて読み込んでとかやってるのが途端にめんどくさくなります。動画編集はLumaFusionで完結してるので、Vlogやショートムービー程度であればもう一眼もパソコンも要らずに、スマホだけで全てが完結できてしまいます。これはすごいことです。
これからも活用していきたいと思います。
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