『竜とそばかすの姫』感想【ネタバレ注意】

レビュー

細田守監督作品『竜とそばかすの姫』観てきたのでダラダラと感想書いていきます。

一言で言うと「全身で追い風を感じる高揚感」

悪意と善意を明確に分離する描写、そして善を絶対的に肯定して勝たせる明確なストーリーライン。そういう意味で、主人公に向かい風が吹くときはあっても追い風が途切れる不安を抱えなくて良いので安心して観れる。

作品内設定の優秀さ

Uや自警団、アンベイル等の設定も主人公らの動向に密接にマッチするように作り込まれている。しかも登場人物が設定の上で動いているというより、設定を自ら逆手に取って行動していくようになるのは流石。また冒頭のチュートリアル的なところで示された設定が一貫して守られているし、また必要のない設定を一切出さないのも流石。ここら辺は設定芸を全面に出しているエヴァとは違うと感じた。

「苦しんでいる人がいてそれがたとえ名前すら知らない相手でも助けること。」

これが本作のメッセージだろう。Uで歌姫になること自体が直接的に主人公を過去のトラウマから救ったわけではないのが良かった。Uはあくまで再び歌えるようになるためのきっかけに過ぎず、歌姫としての知名度や賛否両論に晒されながらもそれでトラウマが晴れるわけでもない。結局素顔で歌えるようになる契機はトラウマだった母の最期のように「見ず知らずの他人を助けるため」というのが美しい。自分を置いて赤の他人を助けようとした母の意図が分からなかった主人公が、母と同じように見ず知らずの他人である竜を助けようと思ったから、素顔で歌えたのだ。もう一度言おう、なんて美しい物語だろう!

「現実世界でもやり直せる」

これもメッセージとしてデカい。冒頭のチュートリアルでは「現実はやり直せないが、Uならやり直せる」といった趣旨の説明がなされる。この説明を作品を通して「いや違う!現実世界でもやり直せるんだ!」と描き切ったのもメッセージだろう。Uでしか歌えなかった主人公は現実世界でも歌えるようになったし、Uでは腕っ節が強く負け物知らずな竜だが父親からの虐待には抗えなかった竜も最後には立ち向かう勇気を得る。主人公らがUをコンセプト通りに現実世界の鏡として「ありたい自分」を出す道具として使うだけで止まらず、そのコンセプトをひっくり返して現実世界で「ありたい自分になるきっかけ」として捉えたところに素晴らしさを感じる。仮想世界と現実世界の対比で言うとアニメ版グリッドマンのラストに近いのかもしれない。

好きなところ

後半になるにつれて主人公とそれぞれの接点を持っていた人たちが一同に会し始める点。アツい。

駅でのシュールなシーン。画面外で喋らせる演出が面白い。

水辺で主人公が歩くシーンを真横から描くカットを何回も使用している。その度ごとに主人公の心情や人間関係の変化、特に距離感の変化が描かれているが、フォーマットが川辺の背景という形で統一されているのでわかりやすい。それでいて使い回し感もない。好き。

メガネの親友。知名度出たらイキるだろ、もうちょっと上手く運用しろよみたいなところを全て背負っているの。Belleがすごいフォロワー多い有名人という設定から出る破綻やツッコミを持ち前のSNS運用力とプロデュース力で全部カバーしてる。いなかったら成り立たない。ちなみに彼女は片手間にクラスの内乱をほぼ一人で鎮圧している。

主人公が悩みを紙に書き出しては破っているシーン。思いつきでも詩的に作詞出来ることに説得力を持たせている。

細田守の思想でたなあというところ

児童相談所がまともに機能してないシーン。

悪役が純粋に悪役しているところ。

序盤の性格悪いキャラが後編主人公の味方になるところ。

まとめ

善と悪がきっぱり別れている作品が好きじゃないので、自分にどストライクな作品ではないことは確かだ。でも演出やメッセージ性の出し方は流石細田守という感じだ。万人が見て面白いが、メッセージ性の美しさがあるのでそれだけで数ある青春作品の一つにはならないだけの唯一性がある。ぜひ観に行って欲しい。

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