レビューカメラ積雲

Serenar 50mm f1.8:最初の一本によし、最後の一本にもよし。

レビュー

バルナックライカ、コピーライカ、M3の最初の一本にどうですか?あるいは最後の一本にどうですか?

ふと興味があって戦後すぐの日本メーカーのレンズについて調べていました。当時はカメラといえばライカ、コンタックス。レンズといえば同じくライカ、カールツァイスという時代。敗戦直後の日本メーカーはこれら先達のレンズをまずはコピーするところから始まり、そこから学び、やがてより優れた製品を作り出していくことになります。

そんな時代を感じさせる一本がこちら。

Serenar(Canon) 50mm f1.8

Photo:積雲
これは何?:キヤノンが1951年に発売したレンジファインダー用レンズ。ライカL39スクリューマウント。
いくら?:マップカメラで2.7万円
好きなところ:金属の光沢感、抜けが良くコントラストと彩度の高い描写
好きじゃないところ:40mmのフィルターが売ってない

概要

このレンズを語るにはまず戦後日本の状況と、いまや知らぬ人はいない超有名カメラメーカーであるキヤノンとニコンの関係について説明しなければなりません。

時は終戦直後。それまで軍需産業を担っていた企業たちはGHQの命令により民生品(軍事に関係ないもの)への転換を迫られます。

日本光学(現ニコン)などはそれまで戦艦大和の測距儀などを作っていましたが、そこからカメラのレンズを製造する会社に改められました。戦前からカメラ本体を作り、日本光学からレンズを供給してもらっていた精機光学(現キヤノン)は引き続きカメラ本体を作る会社として開発を進めていくことになりました。

しかし当時、カメラ本体やレンズを一から開発・製造できるほどの技術もなかったので、ドイツのライカやコンタックスというカメラの構造を参考にしたカメラを作っていくことになります。ドイツは敗戦によって全ての特許を放棄させられていたので、日本メーカーはこぞってコピーをしていくことになります。キヤノンも同様で、ライカを参考に、ライカのレンズを使える規格のカメラ本体を作ることになります。

過去に紹介したNicca ⅢFとかもそうですね。

大戦の遺産となったカメラ。Nicca3F/Industar-22レビュー
皆さんは「コピーライカ」と呼ばれるカメラをご存じだろうか。今回は日本がまだ戦後から復興しきれていない頃に作られたカメラ、Nicca3F/Industar-22を紹介していこうと思う。

ニコンは当初カメラ本体を作る会社ではありませんでしたが、やがて自社でカメラ本体も開発することになります。カメラ本体を先行して製造しており、レンズの供給先であるキヤノンへの配慮もあったのか、ライカではなく、コンタックスを参考にカメラ本体を作ります。使用するレンズはライカ社互換ではなく、ニコン独自のものでした。

しかしこれが仇となります。ニコンは両マウントのレンズを作らないといけなくなってしまったのです。ニコンの標準レンズであるNIKKOR-H・C 5cm F2というレンズを、ニコンが自社マウント用をライカマウント用に優先させて生産したことでニコンとキヤノンの関係は悪化します。

ニコンからレンズが供給されないとなれば、自社で作るしかありません。キヤノンは自社製レンズの開発に本腰を入れ、ニコンと決裂します。そうしてできた標準レンズのひとつがSerenar 50mm f1.8なのです。

レンズ構成を見るとダブルガウス型(プラナー型)です。当時はコーティング技術が発達していなかったこともあり、レンズ面反射によるコントラスト低下を恐れてゾナー型を採用しているレンズが多い中、挑戦的なレンズ構成でした。先程のニコンのレンズはゾナー型ですから、似たような設計にはしたくないという対抗意識もあったのかもしれません。

参考

https://www.nikon-image.com/enjoy/life/historynikkor/0034/index.html
https://global.canon/ja/c-museum/product/s18.html

外観

金属鏡筒の綺麗なレンズです。良品を買ったので錆等もなく、綺麗な状態です。L-Mリングを介してライカM3に付けました。ライカボディーにキヤノンレンズという、何とも酔狂な組み合わせですが、意外にもマッチしています。

ピッカピカです。ライカとも良く似合います。

文字盤の彫り込みも綺麗ですね。

実用上面倒なのはft表示な点。

CANON LENSの文字が誇らしく見えます。

ヘリコイドは少し重め。

いやあ、本当によく似合ってます。

作例

ボディーはライカM3、フィルムはKodak ColorPlus200です。大体の作例はf16まで絞ってますが、後半に開放の作例もあります。

これが開放f1.8です。草の描写から見るに、とてもシャープ。そして色ノリがとてもいいです。

これも開放。左端を見ると口径食によるレモンボケがあります。がこれぐらいなら特徴あるぐるぐるボケっぽくはないですね。いい意味で現代的なレンズです。コントラストも高く、影はストンと落ちてくれます。

たぶんこれはf4か5.6。ピンを外してなければ震える写真枠だった・・・

まとめ

入手して使う上で一つ注意点。フィルター径が40mmなのですが、現在40mmちょうどのフィルターって売ってないんですよね。39mmや40.5mmフィルターは付かないので注意。中古カメラ屋の中古フィルター箱から見つけ出して買いました。

いやあ、このレンズおすすめです。まず安い。ライカ純正で50mmのf2クラスのオールドレンズといえばズマールやズミタール、そしてズミクロンがありますが、これらはコンディションを妥協に妥協しても6万円から。このセレナーと同じぐらいのコンディションなら10万円は下りません。セレナーなら3万円以下でいけます。半額。しかもちょっとだけこっちの方が明るいですしね。

描写も、安物や古いレンズって感じが全然しません。コントラストは高いし、合焦面はキレキレです。しかも開放から。今回は絞った作例が多めでしたが、個人的には開放付近でバチピンを決めると気持ちいいレンズだと思います。見ている限り、絞らない方がコントラスト高いような気もしますし。

ライカ沼にハマっちゃったけど純正レンズが高い高いと苦しんでいるあなた。アポズミクロンは中古でも70万円。ズミクロンは曇ってても6万円。もう美品のセレナーでゴールでいいんじゃないですか。そう言い切れる一本です。

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