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『フィルム製造プロジェクト』の問題点とは何か?

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近年、フィルム写真はデジタル写真には無いその特徴的な色合いや写り、そして撮り直しや確認のできない撮影体験から、インスタグラムを中心に『エモい』『ノスタルジーを感じる』など、若者を中心に盛り上がりを見せています。その一方、写真用フィルムは値上がりの一途を辿っています。先日最大手のコダックがフィルム製品の値上げを発表しました。また富士フィルムも写真用フィルムのラインナップを縮小するなど、先行きの不透明な状況が続いているといえるでしょう。

そんな中、フィルム製造プロジェクトと銘打たれたツイートが話題となりました。『フィルム写真を存続させるため』にツイート主のharu wangnus氏がフィルムを製造し販売するとのこと。

今回はそんなharu wagnus氏の『フィルム製造プロジェクト』とはどういったものなのか、そして賛否両論を巻き起こしたこのプロジェクトの問題点とは何なのか。整理して解説していこうと思います。

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『フィルム製造プロジェクト』とは?

名前だけを見れば、フィルムを生産する工場を持ち、フィルムを一から製造するというプロジェクトのように見えますが、そうではありません。haru wagnus氏のツイートを引用し、彼の指す、『フィルム製造』とは何なのかを見ていきましょう。

ツイートを要約すると、彼がフィルム製造と呼んでいるものの実態は、

  • フィルム自体はKodak Vision3という映画用フィルムの巻き直しである。
  • 本来は映画用フィルムを写真用フィルム用の現像機で現像することはできないため、それが可能なように処理が施されている。

ということです。つまり、既に製品として売られている映画用フィルムを写真用の現像機で現像できるように処理し、写真フィルムのパトローネに詰めるというのを『フィルム製造』と呼んでいる、とのことです。

ツイッター上ではかなり批判的な意見も見られました。

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『フィルム製造プロジェクト』の問題点

haru wagnus氏のツイートを巡っては、ツイッターで多くの意見が散見されました。その中で何が問題となったのか整理していきたいと思います。

論点は以下の3つです。

映画用フィルムの巻き直しを『フィルム製造』と銘打って販売するのはどうなのか
映画用フィルムを写真フィルムの現像所で現像するとトラブルが発生するのではないか
映画用フィルムを写真用として販売してそれが普及すれば、むしろ写真用フィルムの需要がないとみなされ生産がされなくなってしまうのではないか
一つづつ見ていきましょう。

映画用フィルムの巻き直しを『フィルム製造』と銘打って販売するのはどうなのか

先ほども触れましたが、フィルム自体の製造ではなくパッケージングと販売しかしていないのに『フィルム製造』と名乗っているのはどうなのかという意見が多いようです。

また、ツイート内の動画で、段ボールに中国語が書かれていたことから、処理や発注を中国の業者に委託し、ブランディングと販売しかしていないのではという疑惑も持たれています。

また近年はこの方法に類するフィルムのブランドが乱立しており、わざわざ新しいブランドとして立ち上げるには新規性が薄いという指摘もあります。

映画用フィルムを写真フィルムの現像所で現像するとトラブルが発生するのではないか

本プロジェクトはharu wagnus氏が認めているように映画用フィルムを加工して写真用フィルムとして販売するということなのですが、そもそもこのやり方自体にも問題点があるようです。それは現像処理周りです。

まず映画用と写真用では現像処理が異なります。映画用はECN-2という規格で現像するのに対し、写真用ではC-41という規格で現像が行われます。

この2つの規格の大まかな違いを挙げると、レムジェットを溶かす処理の有無と、色再現の違いとなります。

映画用フィルムでは高速巻き上げ時に円滑にフィルムが進むようにレムジェットというカーボンの層があります。一方写真用フィルムにはレムジェットはありません。映画用フィルムの現像規格であるECN-2ではまず最初にカーボン層を除去する過程が入るのですが、写真用フィルムの現像規格であるC-41ではこれがなく、レムジェットが現像過程で現像機内に残留して故障の原因になります。

実際に映画用フィルムをそのまま現像に出してしまうと、このようにレムジェットが残った状態になり、剥がれたレムジェットが現像機を壊してしまうのです。

このことを懸念するツイートも多く散見されました。

これらの指摘に対し、haru wagnus氏は「今のところはエビスカメラさんのみ現像受け付けしている。現像受け付けを検討している現像所にはテスト用フィルムを原価で提供する」という旨のツイートをしています。

一方、現像処理そのものは問題なくとも、本来想定されている現像方法とは異なる現像処理を施すことになるため、色再現性などに疑問を持つ声も上がっています。

映画用フィルムを写真用として販売してそれが普及すれば、むしろ写真用フィルムの需要がないとみなされ生産がされなくなってしまうのではないか

今回の最も重要な論点がこれです。フィルム写真の存続を謳っておきながら、実際にはこのプロジェクトによってフィルム写真の寿命が短くなってしまうのではないかという指摘です。

Kodakでは写真用フィルムも映画用フィルムも同じ生産ラインで作られています。

つまり、あるフィルムに需要が集中してしまえば、他のフィルムの生産が減らされるということでもあります。映画用フィルムを写真用に加工するフィルムが多く売られれば、それだけ写真用フィルムの需要が減り、生産ラインを閉じざるを得なくなってくるかもしれないのです。

これに対し、haru wagnus氏は「あくまで欲しい人向けであり、お金に余裕のある人はKodakやFUJIFILMの写真用フィルムを買って欲しい」とコメントしています。

あくまでお金のない人向けに導入となるような安価なフィルムとして販売するということのようです。価格はまだ未定ですが、現状富士フィルムのカラーフィルムは36枚巻きで1300円前後から販売されているので、それよりは安価になるのでしょうか。いずれにせよ、フィルム写真をどう存続させていくかで、haru wagnus氏とフィルムユーザーの溝は深そうです。

まとめ

フィルムの敷居が下がって、需要が上がれば写真用フィルムの供給が増え、値段が下がると考えているharu wagnus氏と、映画用フィルムの需要が増えて写真用フィルムの生産が圧迫されてしまうと考えるフィルムユーザーたち。フィルム文化の存続を願うからこそ、彼らは熱心に発言をしているのだと考えます。

だからこそ、安易にこれらの問題点に目をつぶり、ただただ「フィルム製造」ってすごい!応援します!といった態度は取りたくないものです。

フィルムが入手可能になり次第、手持ちのライカで試してみたいと思います。

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