『TENET テネット』鑑賞

レビュー

日本での公開初日である18日の朝に『TENET テネット』をIMAXで観てきました。

直ぐに感想を書こうと思っていたのですが諦めました。やばいですね。圧倒的な没入感と情報量の洪水から脱出して現世に帰ってくるまでに1日を要することに。

ノーラン作品の時系列操作においては頂点に君臨するんじゃないかな。幸い海外では既に公開されているので時系列考察は進んでいる模様。それでも『TENET Explained』の動画に対して「TENET Explained Explainedが欲しい」という声がチラホラ。

今回のテーマは『時間逆行』の概念の映像化。ノーラン監督はそこに厳格なルールを敷いています。つまり今作品では偶発的に時間の逆行は起こらない。全て人為的。順行だったものは突然逆行するようなこともない。その点でGACKTによるコメント予告は的を外しているように思えた。「殴った手が戻る」ことはない。これは順行しているものが逆行したという表現であり妥当か怪しいところ。下手したら作品の観方をミスリードさせてしまいそうで怖かったりする。新たな客層の開拓としては否定しないし「必視」であることに変わりないけれど、まあ正直なところ宣伝CMはクソダサいと思う。ネタバレを回避したい人や偏見を持ちたくない人は「GACKTがTENETを観」らへんまでにチャンネルを変えた方が良いかもしれない。

また『逆行』を理解することが作品の理解に直結しているので、中盤までに解釈しきれないと「何かよく分からなかったけれど凄かった」に帰結してしまう。これは非常に残念で勿体ない。この作品の『逆行』理解へのポイントは予定調和の固定観念を無視することだ。例えば逆行しながら銃を撃つと撃った先から弾丸が銃身に戻ってくる。これを順行側の描写で解釈すると既に撃たれていたものが戻るといった予定調和に感じられるが、これは銃自体の因果が反転しているために起こる。逆再生すれば違和感は消えるだろう。逆に順行している人が逆行する銃を撃った場合、何故既に撃たれているのか理解することはできないが銃弾は銃身に戻りながら相手を撃ち抜くという結果が生じる。
(間違っていたらコメントください、もう1回観て訂正します)

この概念理解さえ突破すれば物語構成に注視できるようになる。予習するとより楽しめる作品は2000年の映画『メメント』。『メメント』は時系列の最後と最初から中央に向かうように構成されている。大胆にもこの中央を起点に折り返して作品に収めたのが『TENET テネット』という所感。物語の密度が2倍近くに膨れ上がっているうえに「既に描いたよね」とでも言うかのように物語は中央で終わりを迎える。2時間30分もの上映で「もう終わり!?」と感じたのは初めてだ。

ただ映画として登場人物に焦点を当てることに期待し、それを高く評価する人にとっては満足のいかない作品となるかもしれない。そもそもジャンルが異なるのでそれを理由に酷評するのは些か偏向が過ぎるとは思うが。ノーラン作品はテーマ至上主義と解釈しているので、テーマが感情寄りであった『インターステラー』や史実寄りであった『ダンケルク』のような作品を期待して鑑賞すると痛い目に合うのは確かだ。『TENET テネット』のテーマは『メメント』や『インセプション』と同様に概念寄り。加えてパズルのピースは全て公開するものの解答を出さないのがノーラン作品。近年の邦画は種明かしまで見せて考えずに観られる作品が多いので相性が悪いような気もする。

そして作品を通して気になったのは『時間逆行』の物理考証。『逆行』のイメージに反して1倍速の逆再生だったのだ。時間が流れだと解釈すると、その流れから降りた状態。時間の流れが反転するならば相対的に2倍速になるのではないか。純粋に「逆」を注視してしまい後で疑問が残った。度々出てきたエントロピーへの理解が疑問解消に繋がるのかもしれない。勉強して2度目の鑑賞に備えようと思います。

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