韓国ノワールの良作『新しき世界』

レビュー

韓国最大の犯罪組織ゴールドムーンの理事であり潜入捜査中の警察官でもあるイ・ジャソンの苦悩を描いた作品。

会長が交通事故によって急死し、組織内で次期会長を巡る争いが勃発。それを期に警察が裏で糸を引こうと『新世界プロジェクト』を立案し暗躍する。

まず日本公開時のキャッチコピーが秀悦。「”父”への忠誠か、”兄”との絆か」

”父”はジャソンに潜入捜査を命じたカン課長(警察側)、”兄”はジャソンの兄貴分で幹部のチョン・チョン(組織側)を指している。一見分かりづらい関係性を簡潔に表したのは普通に凄い。

物語に話を戻そう。この映画は思いの外グロかった。PG12区分ではあるものの冒頭拷問シーンから始まる。口にセメント詰めたりドラム缶に入れて遺棄したりする。脅し文句でしか聞いたことがなかったが、まじでドラム缶が出てきた。他に抗争シーンも結構グロい。

ジャソンのカン課長の命令に従わなければ未来のない立場は重々しい。あくまで警察官ではあるがカン課長に見捨てられると犯罪組織の中で生きていく他なく、警察官であることが組織にバレると命はない。この板挟み状態に説得力があった。

警察側の計画も見事で、

  • 後継者として有力なイ・ジュング理事とチョン・チョン理事の2名を対立させ相討ちを狙う
  • 引退すると思われたチャン・スギ理事を懐柔し、イ・ジャソンを参謀に立てる
  • チャン・スギの会長就任後、イ・ジャソンに組織を乗っ取らせる

といったもの。

ジャソンが警察官であることがバレそうになる展開も緊張感があって良かった。他の潜入捜査官が殺されたり、人が良さそうなチョン・チョンの残虐な部分が垣間見えたり。彼自身が他の捜査官を知らなかったり、情報が漏れたことへの対応として警察のデータベースからイ・ジャソンを抹消するのだが、これが違和感なく後の展開に繋がる。

ジャソンの正体を知った兄貴分チョン・チョンはイ・ジュングの勢力に襲われ危篤状態に陥るが、一時的に目を覚まし最期の言葉を投げかける。焦るジャソンに道を示すチョン・チョン。このシーンの名演は本当に熱い。

『新世界プロジェクト』によってジャソンの道は開けていた。警察官としての忠誠心に縛られ、ジャソンが命令通りに動くことを前提とした計画。彼の正体を知るのはカン課長を始め警察関係者数名。ジャソンの決断は如何に。

物語の終焉に痛快感や爽快感はないが何とも言えない余韻が残った。最期に回想を入れてくるのも狡い。前会長の不審な交通事故の真相が明かされないのも良いスパイスになっている。の関係性が少々難解な映画ではあるが、暴力描写が大丈夫であれば是非観てもらいたい作品だ。

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