【微ネタバレあり】ジブリ最新作『君たちはどう生きるか』を観た

スタジオジブリ最新作の『君たちはどう生きるか』を観た。普通に面白くなかった。

全体として思想やメッセージをメタファーで隠して何も残らなかった感じがして満足度が低い。単にエンタメとしてのストーリーの面白さも普通。背景知識が求められるなら今作のプロモーションと相性が悪い。エンドロールで主題歌を聴きながら余韻に浸るといったこともなく、酷評というより面白さがない。

冒頭の火事のシーンは、キャラデザや話し方、躍動感のある動きに懐かしさを覚えながら期待感を高めていた。母の元に向かう少年の目に映る情景から熱風や焦燥が伝わって凄かった。

あと父親の気持ち悪さは良かった。眞人の自傷も父親への不器用で歪な甘えみたいで気味悪くて良かった。そこから何を目的にどう物語が進んでいくのか、現実とファンタジーとの狭間でワクワクした。

塔の入口を埋めたと言っていた気がするけど普通に門はあって、門が開いていることに「罠」だと言っていたりと世界観を把握しづらかった。小説『君たちはどう生きるか』に感化された眞人の物語と思いきや、読んでいる途中でナツコさんの失踪と下世界の冒険が始まり、取ってつけたような関連性の薄さを覚えた。

登場人物の背景描写や関係性も浅く感じ、下世界の生物もペリカンとインコが主で多様性に乏しい。アオサギは小物っぽく、眞人を助ける便利キャラ感が強い。正体を現すまでの中間形態の不気味さが一番好きだった。

インコ大王のあからさまな尾行がバレないので、第三者に世界を壊されるやるせなさより気づかない茶番臭さが勝った。自身の悪意を自覚し、悪意のある世界で友人を作って強かに生きようとする眞人の姿勢はかっこいい。世界の悪意に実感が沸かなかったが、物語を通して唐突ではあれ「ナツコ母さん」と呼べるようになったのは成長を感じた。