朝イチで見てきました。感想です。とりあえず便宜上登場人物の紹介から。
登場人物
登場人物の名前を覚えてないから大体で
主人公:未練タラタラ
ヒロイン:主人公が美化しているが、実は・・・
負けヒロイン:今作の良心
NTり男:ワケあり顔面ヤケドハゲ
ボンボン:全ての黒幕
テーマは未練vs未来
嫌な現実から目を背けて過去の幸福な記憶で生きるか、それとも希望を持って現実を生きるか。この二者択一が今作のテーマだと言える。ある意味ではマトリックス的とも言えそう。
面白いのはこのテーマ上だとNTR男とボンボンは最初から後者でブレないという点。彼らはどんなに辛い現実やドス黒い野望を持っていても生き残るためには手段選ばずに行動する。彼らには「生きるか死ぬか」しかないので善悪はもちろん「今を生きるか過去を生きるか」なんて考えてない。強い。ちなみにヒロインもこっち側。負けヒロインもなんだかんだこっち側。あれ?過去に生きようとしてるの主人公だけでは・・・
考えてみると、現実生きる派が過去に縋る派を利用してしぶとく生きているのを、過去に縋る派の主人公が己が善悪で暴いていく映画であるとも言える。結局のところ、ヒロインが私生児を守ったことは美談だけど、地主の不正が暴かれて暴動が起こって治安が悪くなることに主人公は罪悪感はない。「波で綺麗に洗いさってくれる」とまで言い切る。それで死にかけたヤクザもいたけど1ミリも共感してくれない。主人公の善悪はヒロイン贔屓だ。
もう少し掘り下げると、現実生きる派は文字通りの現実主義で、生き残るためなら手段を選ばないし、現実にいられるなら酒にも逃げるし、現実と向き合ってそれなりの生き方をしているのに対して、主人公ら過去に縋る派は美化された過去に毒されているので理想主義者っぽくなりがちだ。生存すら先の見えない世界で生死より善悪を優先するのは過去に縋っているからなのかもしれない。
面白かったところ
ピアノに挟まったNTり男を助けて溺れるシーン。いや助けなきゃいかんのはわかるけど。
レミニセンスに関する主人公の説明や警告は全部振り。同じ記憶を何度も辿ると良くないとか、中毒性があるとか、身をもって教えてくれて説得力がある。
ヤクザの本拠地に雍正帝の肖像画が飾ってあった。(世界史要素)
検察で働いてる主人公がレミニセンス尋問でヒロインの追跡をしようとしているときの同僚の反応。(え?捜査投げて元カノ追うんすか?)みたいな空気。
ホログラムに入ってNTり男の代わりになるシーン。NTRモノの中でも屈指の名シーンだと思う。ヒロインがヤク漬けでもうNTり男を主人公だと思いこんでいるとかいう役満状態をビデオレターどころかホログラムで見せつけられているのに、ホログラムに入っていって成り代わるという精神力の強さ。しかもヒロインが気合いで薬に抗ってたので結果的に滑稽にならない。
疑問点
記憶は麻薬よりも中毒性があると言っておきながら麻薬に溺れた過去のあるヒロインにショック受けてるところ。あんたらの商売の方がやばいって自覚ある?ところで主人公がレミニセンスのガイドが上手いのは商売柄もあるけどやっぱり被験者だからというのが大きいと思う。過去にハマらせるのが上手い主人公。やっぱりこいつヤクの売人より危ないんじゃないか。
ヤクの売人のヤクザなら火傷で済むけど、こいつに目をつけられたら気が狂うまで火傷体験を味合わされれる。怖すぎる。ヤクザや地主は少なくとも始末はしてくれるのでまだまし。負けヒロインもちゃんとヤクザのことをわかってるから楽にしてあげたしね。
エンディングの解釈
オチの救われ方が独特。
結局ヒロインは死んでたし真相は解明されたので負けヒロインと添い遂げることを決める主人公。負けヒロインも自分の娘から逃げるのをやめる。3人で仲良く暮らしましたとさ。
とはならないんだなあ、これが。
結局主人公は装置に入ってヒロインとその行方を追った日々に縋りながら生きることを選ぶ。負けヒロインも「まあ辛いことがあるから現実が輝くよね」って言ってそれを肯定する。最初から負けヒロインという確信をしていたけど、負けヒロインはやっぱり負けヒロインだった。
こういう系は過去に縋らずに現実を生きようっていうメッセージにしがちだけど、本作は記憶に縋る人達はいて、別に否定もされていない。レミニセンスする装置はたくさんあるし、バーンしないように人権も考えられている。幸せなら麻薬よりも中毒性の高い何かの中で生きたっていいのだ。ここら辺はダリフラと明確に差別化している点だと思う。もしダリフラだったら魂宇宙人に吸われてるよ。
あと本当に好きなのが主人公の追憶=映画『Reminiscence』と入れ子構造にしてきた点。つまりこの映画を振り返ったり再び見た観客は主人公を否定できなくなってしまうのだ。だってその行為は、まさしく素晴らしい体験をした過去に縋っていることに他ならないのだから。
最後にこの言葉で締めようと思う。『過去には中毒性がある。いわんやこの映画もや。』
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