ブログ読者の皆様。お久しぶりです。ほぼ半年ぶりの投稿になります。現在アニメーション作家として活動している積雲改め司島積雲です。現在は新海誠のような映画監督を目指すべく、自主制作アニメ映画『渡り鳥になる君』のパイロットフィルムを製作中です。
今回はTwitter上で
今はXだよ。
X?知らん子ですね・・・。
ごほん。Twitter上でビビッとくる投稿があったので、それについての論考をまとめたいと思います。
その投稿とはこれです。
このnoteは、現在VC(ベンチャーキャピタル、起業家に投資したり支援したりする会社)で働いていらしゃる水谷圭吾氏がインディーアニメについて彼が感じている魅力や、それを生かすためのVC視点での事業プランの提案までされている良記事です。ぜひ読んでいただきたいと思います。
本気のnoteか・・・ならばこっちも本気で書かねば。
さて、今回この記事では、このnoteに対し、インディーアニメの現状をアニメ作家という視点で振り返り、noteで提示された事業プランに対する映画監督を目指すアニメ作家という視点からのアンサーと、僕なりの事業プランを提案する論考になります。
WE ARE indie_animeとは?
ちょっとカッコつけやがってという感じですが、『WE ARE indie_anime』というシリーズを立ち上げます。始めた理由は、最近こんな感じのやりとりがあったからです。
積雲さんって、最近よくTwitterで長文ツイートしますよね。
ああいうのってちゃんと論考にまとめたら生産的だと思うんすよね〜
ギクッ!確かに。
本シリーズでは、私こと司島積雲がTwitterに書き込んでいる言論ツイートを、論点を整理して、見返す価値のある論考としてしたためていこうと思います。
さて。今回のテーマは『インディーアニメから次の新海誠を生み出すには』です。
いや待て、インディーアニメってなんぞや、というわけでまずはそこから。
インディーアニメとは?
インディーアニメとは何でしょうか?
インディーアニメとは、こむぎこ2000が2020年に発起したTwitterハッシュタグ#indie_anime (旧名称:自主制作アニメーション部)に投稿されたアニメーション作品群およびそのアニメ作家のコミュニティーです。その作品群の中でも、ずっと真夜中でもいいのに・Eve・TOOBOEなど有名アーティストのMVが代表作品としてあげられます。
2023年には、インディーアニメクロスというリアルイベントを2月と10月に開催。11月には大阪での開催が決定するなど盛り上がりを見せています。
indie_anime2023と題した図録を頒布するなど、キュレーション的な意識も内在しているという点では珍しいクリエイターズコミュニティと言えるでしょう。
そんなインディーアニメですが、作品のうち大部分を占めるのは作品はミュージックビデオ(以後MVと表記)です。その名の通り、アーティストの曲に合わせ、そのアーティストの世界観やキャラクターなどをアニメーションで表現するのというものです。その制作形態としては、アーティストに曲のデモ音源と共に映像制作の依頼を受け、提示された納期までにアニメーションを完成させ、曲のリリースと同時にMVを公開する、という形態が一般的です。
一方、自主制作アニメという形態もあります。こちらはアニメ作家がオリジナルのストーリーやキャラクターを創造し、セリフや効果音、劇伴などを付け、アニメ作家自身の世界観やキャラクター表現するものです。こちらは明確な依頼主はおらず、その名の通りアニメ作家自身が自主的に制作するものになります。MVに比べ、作品数やアニメ作家の数もそこまで多くはありません。
事業プランを立てる場合を考えて両者を比較すると、MVという分野は確かに規模は大きいものの、ある程度ビジネスの構造が固まってきていて、なかなか新しいビジネスモデルを導入するのは難しそうな印象があります。
その一方で自主制作アニメという分野は、まだそもそもマネタイズの仕組み自体が整っていない点において、既に収益構造が固まっている音楽業界と、その周辺分野にすぎないMVとは違なり、ルールメイキングの可能性が見えます。クリエイター側に適切なインセンティブ(やりたいと思わせること)を提示できれば大きなビジネスチャンスが生まれるのではないか?と思うのは自然な流れです。また映画など大規模なビジネスにも繋げられるという点で、可能性の大きい分野だと言えるでしょう。
さて今回は、インディーアニメというカテゴリの中でも、MVではなく、自主制作アニメという分野が今どういう状況なのかを見ていきましょう。
- これまで制作された作品のケース。
- 今まさに制作されている自主制作アニメのケース。
- 自主制作アニメに対してアニメクリエイターがどのような気持ちや問題を抱えているか。
これらを一つづつ紐解きながら、どんな事業プランが創出できそうか、考えてみましょう。
自主制作アニメのモデルケース
これまで制作された自主制作アニメのケースのうち、成功例と呼べる例を見ていくと、自主制作アニメには一つ定石ルートがあると言えます。それは商業映画のラインに乗ることです。
古くは新海誠が自主制作アニメ「ほしのこえ」から商業アニメスタジオを立ち上げ、やがて大衆アニメ映画監督になったのをモデルケースに、インディーアニメでも同様のアプローチが取られています。今回は2人のクリエイターを例に、彼らがどのようなルートを辿ってきたかを紹介します。
モデルケース1:loundraw
まず紹介したいのがloundrawです。もともとイラストレーターとして活躍していた彼は、大学の卒業制作としてアニメーション作品「夢が覚めるまで」を制作し、発表します。これは架空のスタジオである『FLAT STUDIO』が作るアニメ映画の予告編という設定で制作されました。
卒業後、彼はポニーキャニオン・石井龍Pバックアップのもと、実際にFLAT STUDIOを立ち上げます。複数人体制での制作体制を整え、当初は主にアニメCMの分野で活躍します。
そして2021年、彼の初監督作品となるアニメ映画、サマーゴーストが公開されました。
モデルケース2:安田現象
次に紹介するクリエイターが安田現象です。彼は主に3Dアニメーションの分野で、ショート動画・MVで活動しているクリエイターでした。ずっと真夜中でいいのに、というアーティストの『正しくなれない』が代表作として挙げられます。
そんな彼は株式会社Xenotoonのバックアップの元、安田現象スタジオを立ち上げます。クラウドファウンディングを成功させます。
複数人体制で制作を進め、2024年夏には初監督となるアニメ映画のメイク・ア・ガールが公開される予定です。
この2人に共通する点としては、
- 何か代表的な作品を制作する
- プロデュースサイドによって見出され、経済的なバックアップや映画業界との繋がりを確保
- スタジオ設立。複数人の制作体制の確立
- 監督作品の劇場公開。商業アニメ監督としてのキャリアスタート。
という流れです。
このパターンに例としてはtoubou氏の『さざ波の少女たち』(卒業制作→現在Scooter filmでアニメーションを制作)もあり、個人制作で代表作→商業的なバックアップ というのが一般的なようです。
さざ波の少女たち 予告編 pic.twitter.com/17nL5MhLBu
— 相馬路子 / toubou. (@ahirupoi) March 1, 2022
増えてきている自主制作アニメ作家
これまではMVに比べかなり参入人口が少なかった自主制作アニメですが、今年に入ってその人口は増えつつあります。今夏、クラウドファウンディングの企画が5本立ち上がりました。そのうち今回が初となるものが4つもありました。参入者の増加を示す象徴的な出来事です。
今夏立ち上がった自主制作アニメのクラウドファウンディング
自主制作アニメで立ち上がった4つのクラファンを紹介します。
忘星のヴァリシア第二章
既に名古屋のミニシアター系で上映実績のあるAsh(灰)氏による次作品となるクラウドファウンディング。異例の170%を達成。尺は30分ほどを予定。
MIDNIGHT THE ERA
美術大学の学生ら30名のグループ、スタジオ無著の送る特撮×アニメ映画。こちらも目標を達成。尺は30分ほどを予定。
まなび石と自由帳
現在美術大学の学生でありアニメ作家として活動中のみずみずなまず氏による自主制作アニメ。個人制作の自主制作アニメを劇場上映することを目的に掲げクラファンを立ち上げ。こちらも目標達成。尺は20分ほどを予定。卒業制作も兼ねる?
ポップガール・ギアテック
アニメ好きの大学生やアニメーターが集まって制作する自主制作アニメ『ポップガール・ギアテック』。なんと今日武蔵野美術大学の芸術祭にて本編の上映が決定。こちらも目標達成。
これらの自主制作アニメ企画の特徴を考えてみます。
- 制作者が学生(『忘星のヴァリシア』除く)
- 作品の尺としては20分から30分ほど
- 制作人数自体はばらつきがある。1人でやっている方もいれば10人以上の規模になることも
このうち、尺が最低でも20分ほど作ることが多いのは、ミニシアター系に持ち込む際の最低限の尺であることが多いからです。
参考:大須シネマ
これらの企画が全て目標金額を達成していることも特筆すべきことだといえるでしょう。自主制作アニメは今かなり注目されている分野だといえます。
ここでプロデューサー視点を想像してみましょう。
今後もAI技術の普及や制作ソフトの進化で参入者は増え続けそうだな。
MVの現場では集団制作が一般的になってきてるし、映画規模の長尺を作るためのスタッフも集められそうだ。MVは作れるんだし、あとは代表作さえ見せてくれればスタジオを立ち上げて複数人体制で作らせることもできるんだけどなあ〜
そうはいっても、自主制作アニメって結構厳しいんだよ〜。
なぜクリエイターは自主制作アニメを作りたがらないのでしょうか。
クリエイターが自主制作アニメを制作したがらない理由
知り合いのアニメMVを作っているクリエイターに聞いてみました。
どうして自主制作アニメとか映画とか作らないの?
実は…
いろいろな回答があったのですが、類型化するとこんな感じです。
金銭面
MVの場合は制作期間が短く、3ヶ月単位、少なくとも半年よりは短いスパンで報酬が支払われます。そのため、フリーランスで活動する場合でも安定して生活を続けることができます。
しかし自主制作で長い尺を作ろうとすると、半年以上のスパンをかける場合も多く、その間は収入が無い状態が続きます。そして最も重要なのが、作ったところでマネタイズする方法がないということです。せっかく長い期間かけて作っても、それによって生活することができないのです。
納期が無い
MVの場合は納期が設定されていて、そこを守るかどうかが信頼につながります。また依頼主がビッグネームの場合、有名アーティストに迷惑をかけられないというモチベも生まれます。
一方、自主制作の場合はいつまでに完成させろという人はいません。強いて言えば作家本人が設定することになりますが、そこには納期を守るインセンティブがありません。結果作品制作が続かないといったことも考えられます。
作業量が膨大
3分程度の尺を3ヶ月で制作すれば完成するMVに比べ、脚本を作りセリフも入れストーリーを展開するとなるとどうしても長尺になります。
長尺を作るのはシンプルに大変。3ヶ月単位なら大丈夫でも、それが1年単位になるとどうでしょうか。MVの場合には不要な脚本制作や音響、声優などもつけなければならないので作業はさらに膨大になってしまいます。
脚本術や映像演出のノウハウが要求される
MVの場合、どんなアニメを作っても音楽とのシナジーでそれなりによく見えること大きく、そこが「誰でも作れる」に繋がっています。
自主制作アニメの場合、音楽で誤魔化すことができません。つまり脚本や映像演出が巧くないと粗が見えやすいのです。せっかく作り始めても、MVほど見栄えが良くないので、心が折れるクリエイターも想定できます。
同業者の不在
MVの場合、MVを制作するクリエイターは他のMV制作者と作業通話などでモチベを保っています。
しかし自主制作アニメの場合にはそういったコミュニティがないので、孤独になりがちです。
アーティストの知名度にあやかれない
MVはアーティストの知名度が高ければその分見てもらうことができ、アニメ作家としての知名度に繋げることができます。
自主制作アニメは公開してもそのアニメ作家の今の知名度でしか見てもらえないので、再生数が稼げません。
作ったところでキャリアにつながる確証がない
MVの場合は案件をこなしたという実績ができ、プロフィール等にも有名アーティストのMVを担当したと書くことができます。
しかし自主制作アニメの場合、作って公開したところでわかりやすい実績にはなりません。
現状、自主制作アニメを作る人は卒制として作るパターン(loundraw『夢が覚めるまで』・toubou『さざ波の少女たち』・みずみずなまず『まなび石と自由帳』などが例)が一般的と言えます。なぜなら、学生のうちは仕送り等があり、長期にわたる制作が可能なモラトリアムを確保できますし、なにより卒業がかかっているという重圧と明確な納期設定があるからです。しかし卒業した後に自主制作を続けるのは金銭的にも労力的にも至難です。
逆に言えば、適切な報酬、納期設定ができれば、自主制作アニメを作る人口を増やすことができそうです。
さて、インディーアニメにおける自主制作アニメの現状と、MVアニメクリエイターの悩みを理解した上で、水谷圭吾氏の事業プランを見てみましょう。
水谷圭吾氏『ショートアニメ制作スタジオ兼配信プラットフォーム』について思うこと
水谷圭吾氏の事業プランを要約するとこんな感じです。
事業アイデア: ショートアニメ制作スタジオ兼配信プラットフォーム
この事業は、アニメ制作のためのスタジオを提供し、個人アニメーターの創作活動をサポートします。
また、独自の配信プラットフォームを構築し、オリジナルアニメーション作品を提供することを主眼としています。同時に、既存の優れた作品(MV等)をその新たなプラットフォームで提供する機会も提供します。
アニメ作家が生み出すストーリーテリングを強調し、アニメ作家に原作を作らせたり、既存IPとアニメ作家を引き合わせるなど、水平的な展開も行います。
さらに、アニメーターのテイストに合わせたオーディションを実施し、原作を募ることで、多様なアニメーション作品を生み出すことを目指しています。
この事業は、高品質なアニメーション作品を制作し、新たなブランドを築くことで、日本のアニメーション産業に新たな創造性をもたらすことを目指しています。
なんかChatGPT臭いと思った?正解。
つまり
- 独自配信フォーマットによるマネタイズ
- アニメ作家にスタジオを提供してサポート
- アニメ作家はストーリー作りが弱いから既存の小説や漫画とマッチングさせる仕組みを作ろう
- アニメ作家がいろんな原作をオーディションで選べる環境だとなお良い
という感じのようです。
参照元
知らなかった点
ショート動画がかなり伸びていることは知っていましたが、あまりインディーアニメの分野が進出していないこともあり、未知の分野だと感じました。
適切だと思う点
MVは買い切り型が一般的で、権利や印税を持てないというところの問題意識は共有できるかなと感じました。ただしこれはMVという特性上のもので、自主制作には当てはまらないですね。
ショートの現場では作画がリッチなものが出てこないというのはそうだと思います。
才能と才能がぶつかる場所が必要というのは心の底から共感できました。(記事後半ででこれは絵コンテ研究会という形で自分なりのアプローチを載せます)
理解が不足していると思う点・疑問点・補足
ここからは個人的に事業プランに対する個人的なツッコミを入れていきます。
アニメ作家がきちんとストーリーを作れるような環境づくりが大事だと考えています。原作ものをやるとどうしてもMVと同じで買い切り型になってしまいそうなのと、配信フォーマットにのせる際の権利処理にだいぶ面倒がかかりそうかなと。つまり原作を借りるのではなく、アニメ作家がストーリーまで作れるに越したことはないし、そういうクリエイターを育成すべきだと考えます。
また独自に配信フォーマットを持つというアイデアですが、現状配信フォーマットはYouTube一強であり、期間限定公開などで注目を集める方が一般的です。独自フォーマットを持つことの敷居の高さは理解するべきでしょう。
DOKUSO映画館等で既に実写映画では自主制作映画の配信プラットフォームがあるのですが、普及していないことを鑑みると悪手な感じがします。さらにマネタイズのための広告等が挟まり、UXが悪いとなると収益ラインに乗るだけのユーザーを獲得できるかも不透明です。
肌感ではショートアニメの分野はあまりビジネスサイドに興味を持たれてない感じがあります。というのはショートは動画配信サービスの広告収益で稼ぐという収益体制が既にあり、新規事業としての余地が薄いからです。どちらかというとビジネスサイドはオリジナル脚本・長編映画orシリーズ作品志向な感じがあります。それは映画や配信という媒体で勝負でき、収益パターンが多様だからです。
個人的な予想では、独自配信フォーマットは広告収入のみでスタジオを賄えず、またショートに限定するとビジネスサイドとのミスマッチを感じます。またクリエイターとってのキャリア的なチャンスを(直接的には)創出できていないという点で、片手落ちな感じがします。
今、自主制作アニメはMVほど一般的ではありません。まだクリエイターの中には、自主制作で、しかも映画なんて、自分にはできないと思っている方が多数派です。一般的でないものをどう一般的にするか。
そのヒントは、まさにこむぎこ2000がインディーアニメをどう発展させてきたかという歴史から学ぶことができます。
こむぎこ2000の革新性・インディーアニメからなにを学ぶか
かつて、2020年以前はフルアニメMVを個人制作することは一般的ではありませんでしたが、こむぎこ2000の2020年度のアニメMVの衝撃とハッシュタグ#indie_anime以降、だんだんと一般化していきます。彼はどのように個人のアニメMV制作を普及させたのでしょうか?
iPad一台でアニメMVの衝撃
2020年8月2日。不革命前夜MV公開。このMVが全てを変えました。
線の荒さや色塗りの粗さはあれど、色彩やモチーフには色濃く彼の作家性が反映されています。
当時こむぎこ2000は不革命前夜をipad一台で一人で作ったということを宣伝し、一人でアニメが作れる時代を宣言しました。
使用機材はiPad Pro一台です!!(結局PC使わなかった)
今はどこでもiPad一台でアニメ作れる良い時代。 https://t.co/v4vB4es58d
— こむぎこ2000 (@komugiko_2000) March 13, 2020
不革命前夜と勘ぐれいはこのiPadで作りました。最近新しいiPad買ったのでこいつは個展で展示します。 pic.twitter.com/OGLaEEi7sd
— こむぎこ2000 (@komugiko_2000) November 27, 2021
それに触発されたイラストレーターがアニメに参戦。それが今のインディーアニメのトップクリエイターたちになったのです。「iPad一台で全編アニメのMVが作れる」この挑発にも似た宣言こそがクリエイターをアニメの世界に引きずりこんだのです。
つまり、実現可能性を提示したのです。
ハッシュタグ:indie_animeの立ち上げ
そうしてアニメを作り始めたクリエイターに、きちんと作品発表の場を設けたのもこむぎこ2000でした。ハッシュタグindie_animeの制定は、こむぎこ2000のMVに触発されてアニメを始めたクリエイターたちが作品を投稿する場として機能しました。
ただのハッシュタグではなく、こむぎこ2000本人が運営するindie_anime公式アカウントがRTするという触れ込みも大きく影響しました。零細クリエイターも他の人に見てもらえるなら・あのこむぎこ2000に見てもらえるなら作ってみようかなというインセンティブを与えたのです。そういう意味ではボトムアップなモーメントを作り上げたのです。
↑自主制作アニメをツイートする際、こちらのハッシュタグをつけて頂ければ@komugiko_2000 が独断と偏見より当アカウント、こむぎこ2000のアカウントでリツイート拡散します。
— indie_anime (@indie_anime) April 13, 2020
結論として、クリエイターが自主制作アニメを作るには、2つのものが必要だと言えるでしょう。
まずは実現可能性の提示。クリエイターが感じている「作れない」を「作れる」と思わせること。
次に作品を自分の知名度以上に見てもらえるような場を作ること。スタジオや配信プラットフォームの整備は大事なのですが、その目的は作品を広くいろんな人に行き渡らせるためです。クリエイターには自分の知名度以上に作品が見られる場があるんだと思わせなければいけません。
以上を踏まえて、司島積雲が考える、自主制作アニメを盛り上げる事業アイデアについて紹介していきたいと思います。
それは『インディーアニメ・フィルムフェス&絵コンテ研究会』構想です。
『インディーアニメ・フィルムフェス』構想。年に一度開催される自主制作アニメの映画祭で、MVではなくオリジナル脚本・監督のアニメ作品が映画館のスクリーンでオムニバス上映される。監督のトークイベントなどもある。出典した監督は、次の新海誠を探すプロデューサーや会社とコネクションを作る。
— 司島積雲 Shijima Sekiun (@sekiun_creation) October 25, 2023
ってなにかツッコミが聞こえてきましたよ。
いやいや、事業プランはわれわれプロが考える仕事ですよ。君ってたかがアニメ作家でしょう。事業を考えるのは素人だ。君の考えることなんて、われわれが考えつくに決まっているさ。比較優位だよ、比較優位ってもんを示してもらわないと。我々になくて、司島君にあるものは何だい?そして、なぜ、映画祭なんだい?で、絵コンテ研究会って何?
社会人の起業家が知らないけど、僕が知っていて、僕が考えることの強みって何なんだろう。なんで映画祭がいいなって思ったんだっけ。
参考
司島積雲、お前の比較優位性は何だ?
そもそも社会人起業家ではない私、司島積雲が提案したアイデアが優れているという根拠はどこにあるのでしょうか。そしてなぜ、映画祭なのでしょうか。
インディーアニメの実態はアニメ作家が1番わかっている
実際の制作者であるというのは大きいといえるでしょう。起業者では知り得ないような、インディーアニメ界隈の空気感を知っています。
そして納期がなければ全然作品が完成しない・進捗管理をしてくれる人がめちゃくちゃ重要・ストーリーのあるアニメを作りたいのに脚本術と映像演出を全然勉強しない…などといった、クリエイターの負の側面もよく知っています。
これらのクリエイターの気質に起因する問題を解決する手段として思いついたのが、『インディーアニメ・フィルムフェス&絵コンテ研究会』構想なのです。
まずは映画祭を行うことで納期を設定し、見てくれるというインセンティブを設けます。でも既存の映画祭ではダメなのか?という疑問が湧いてきます。
インディーアニメから映画業界への橋渡しの分野は取り組んでいる社会人がほとんどいない
hashaganimefes、
講談社ショートフィルム、
などインディーアニメを包含しようという映画祭は無いことはないのですが、これらの映画祭には問題点があります。どれも実地のイベントではないという点と、コンペ形式で、優秀作品に賞や賞金を与えるにとどまっている点です。これでは映画祭を通じてクリエイターがファン交流することもできず、また今後のキャリアに直接的に繋げることも難しいなと考えてしまうでしょう。
新千歳空港アニメーション映画祭は、実地のイベントもあるという点や、国際色が強意という点で訴求力はあるイベントですが、いかんせんインディーアニメとは少し距離が遠い感じがあります。
インディーアニメクロスは実地のイベントであり、図録を作ってクリエイターキュレーションし、ビジネスサイドのカタログとしてMV作家の仕事の機会創出に貢献したり、トークイベントをしたりとクリエイターのエンパワメントという点では良いイベントです。しかし交流する対象がファンに限られ、またメインのクリエイターがMV作家であるという点で、自主制作アニメのクリエイターがキャリアを掴む場として優れているとは言い難いです。
1番近いイベントとしてはインディーアニメ・インシネマが挙げられます。2022年11月に行われたイベントで、既存作品の上映にトークショーも行うなど、インディーアニメクロスの先駆け的イベントでした。しかしあくまで既存作品の上映に過ぎず、新規作品創出の場ではありませんでした。
先行事例を鑑みても、どこか片手おちな部分が多い映画祭という分野。そこに新たな価値を付加した映画祭を構想できそうです。自主制作アニメ作家にとって、理想的な映画祭を考えてみましょう。
『インディーアニメ・フィルムフェス&絵コンテ研究会』
理想の映画祭、『インディーアニメ・フィルムフェス』とは次のような要件を満たすものであると考えられます。
- MVではなく、自主制作アニメを扱った映画祭である。
- インディーアニメの名を冠し、インディーアニメのクリエイターを主役にする。
- 実地イベントがあり、トークイベント等でファンとの交流ができる。
- ビジネスサイドにも接触でき、将来のキャリアを掴む場になる。
- 参加クリエイターの図録を制作し、イベント外のビジネスサイドの人たちからも自主制作アニメ作家を拾い上げれるようにする。
- 1年に一回開催する。
これを全て満たした映画祭こそ、私司島積雲が構想する『インディーアニメ・フィルムフェス』です。このような催しがあれば、自主制作アニメ作家の登竜門として大きな役割を果たすことでしょう。
しかしこれだけでは不十分です。進捗管理や、脚本術・映像演出の教育を含めたバックアップをしてあげなければ、イベントに作品を出展するクリエイターの母数が増えないからです。
今、インディーアニメには素晴らしいMV作家たちがいます。しかし先述した要因で、なかなか自主制作に手が出ない方も大勢います。そんな彼らが自主制作アニメを始めたらどうでしょうか。きっと素晴らしいオリジナル作品を作ってくれるに違いありません!参加するクリエイターが増えれば増えるほど、自主制作アニメという分野の全体のクオリティーも大きく向上するでしょう。
そのためには、自主制作アニメつまり、潜在的に自主制作アニメを作りたがっているが、今はMVしか・・・というアニメーション作家に、自主制作アニメ、作ってみよう!と思わせなければなりません。つまり実現可能性の提示をしなければならないのです。
そこでクリエイターの進捗管理や脚本術・映像演出のバックアップを担うのが絵コンテ研究会です。自主制作アニメに要求される脚本術や映像演出のノウハウを共有しながら、同じ志を持ったクリエイター同士で切磋琢磨し、進捗を共有しあう場、それが絵コンテ研究会です。その要件はこんな感じです。
- 参加料は無料である。
- 実地とオンライン両方で開催する。
- 週に一回の頻度で実施する。
- 脚本術・映像演出を学ぶ場である。
- 毎回学習したことに関する課題が科される。それをこなすことでクリエイターが作品を完成させ、映画祭に出展できるようにカリキュラムが組まれている。
- 他のクリエイターの進捗を見て、切磋琢磨する場である。
- 参加者は『代表作』を持つ自主制作アニメ作家になれる。
これが達成できれば、既存のMVクリエイターの中から、自主制作アニメに参入するクリエイターが現れることでしょう。
そんな急に絵コンテ研究会と言われても、出来るの?と思われた方。
もう実は司島積雲主導のもとDiscord上で2022年度より稼働しております。現在は110名ほどのクリエイターを抱えるサーバーです。既に脚本術と映像演出の分野においては学習資料が整っており、こちらはオンライン上であればノーコストで始められます。というかやっているという状況です。
金曜日また絵コンテ研究会やるよー
カメラワークのパンについて扱うよー
Discordでやるので興味ある方リプかDMください(アニメ・イラスト・映像クリエイターのみ pic.twitter.com/yBP9AIMWSN— 司島積雲 Shijima Sekiun (@sekiun_creation) October 25, 2023
しかしこれでも物足りないと司島積雲は思います。何が足りないか。それはこむぎこ2000が2020年にクリエイターを驚かせた「iPad一台で全編アニメのMVが作れる」という衝撃です。センセーショナルな響き。イラストではなくアニメだ!とクリエイターを唸らせたあの衝撃です。
つまり、次はMVではなく自主制作だ!映画だ!となるような衝撃があれば、インディーアニメの勢力図はMVから自主制作アニメの時代へと大きく変わることでしょう。
そんなおいしい衝撃あるわけ…しかし私司島積雲はその衝撃を既にこの身をもって感じ始めています。それは画像生成AIを生かしたアニメ制作です。
2024年。AIを使って個人でアニメ映画が作れる!
2022年に登場した画像生成AI。私自身は今年の5月から触り始めたのですが、その可能性の大きさはかなり実感しています。
まだ小改良の余地はありますが細かいアングルのキャラ似せが容易という点で画像生成AIの補助によるアニメが実用化に至ったと確信しています。 https://t.co/GtuZWfDAWt
— 司島積雲 Shijima Sekiun (@sekiun_creation) August 10, 2023
商業アニメでも見ないであろうスーパーキャラクターシート。なお明日から地獄の修正作業が始まります。 pic.twitter.com/eMueWeqdAT
— 司島積雲 Shijima Sekiun (@sekiun_creation) August 24, 2023
簡単に言えば、AIを作業者にし、クリエイターは監督としてクリエイティブの重要な側面に注力できるのが素晴らしい点です。しかしそんなことをいくら言葉で語ったところで仕方のないことです。百聞は一見にしかず。『不革命前夜』のようなセンセーショナルな作品がなければ説得力はありません。
それを今、作っています。そして2024年、公開します。
冒頭に自己紹介の中で話した、現在制作中の渡り鳥になる君パイロットフィルムは、『AIを使って個人でアニメ映画が作れる!』という衝撃をインディーアニメに与えるべく、鋭意制作中のものだったんですね〜
そしてその制作で得た、AIをアニメーションに活用するノウハウを、絵コンテ研究会でも共有したいと考えています。そこでは他のクリエイターともいい使い方を模索し、AIに関するノウハウの集積場にします。
そしてただ単に自主制作アニメ作家というだけではなく、次世代を見据えた、これからのクリエイターを創出する場、それが絵コンテ研究会なのです。
絵コンテ研究会の要件に追加しましょう。
- 新たな制作ツールである画像生成AIの普及の場にも活用する。
『インディーアニメ・フィルムフェス&絵コンテ研究会』が実現すればインディーアニメはどう変化するか
もしこの構想が実現すれば、個人作家がアニメを作るという時代を生み出したインディーアニメ革命に次ぐ、いやそれよりも大きな衝撃が巻き起こることでしょう。
インディーアニメの作品群やクリエイターはMVよりも自主制作がメインになるでしょう。
自主制作アニメ作家は絵コンテ研究会できちんとした脚本術や映像演出を学び、そして画像生成AIすらも武器にして、これまで不可能だった「個人でアニメ映画」を成し遂げることになるでしょう。
そしてそんな最新の作品群やそのクリエイターは「インディーアニメ・フィルムフェス」で一同に会し、次のアニメ映画監督を探すビジネスサイドに接触し、商業のキャリアをスタートさせることでしょう。
これこそが、私積雲の考える『インディーアニメから次の新海誠が生まれる』未来です。
作ろうぜ、僕らのインディーアニメ時代!
— 司島積雲 Shijima Sekiun (@sekiun_creation) October 25, 2023
しかし、それだけでしょうか。新海誠がデジタル作画を持ち込んでアニメ業界に衝撃を与えたように、商業アニメーションへの影響も避けられないと考えられます。さて、どんな影響が考えられるでしょうか。
商業アニメーションへの影響
個人で長尺なアニメを作れるというのはただ単に個人クリエイターの在り方を変えるだけにとどまりません。商業アニメスタジオも、この新時代に対して変革を迫られることでしょう。なにせはるかに安価な個人クリエイターが、アニメスタジオよりも良質なアニメ作品を作り出す時代が来るのですから。
時代遅れのワークフロー、効率化の進まない商業アニメスタジオの現場も、大きく変革していくのではないでしょうか。
さて、いいことずくしを書き連ねてきた『インディーアニメ・フィルムフェス&絵コンテ研究会』構想ですが、実現するにあたってはいくつかの壁があります。
『インディーアニメ・フィルムフェス&絵コンテ研究会』の抱える課題
主に金銭面に起因する問題があります。
- 自主制作アニメを作っている間のクリエイターをどう経済的に支えるか
- イベントや研究会のビジネス的な座組をどう組むべきか
- イベントを誰が主催するのか。(言い出しっぺだから司島積雲、お前がやれというのはそうだが、色々な都合上やれるのは絵コンテ研究会までなんですよね)
- どれだけ関係者を巻き込めるか
これらに対していい感じの解決策がある人、そもそもこうしたらいいんじゃないかというアドバイス、どしどしお待ちしています。
ではまた!
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