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【感想】学生が読む TrymenT -AlphA-

レビュー

TrymenTは創作の総合芸術だと言ってもよいと思う。

TrymenT『TrymenT ―今を変えたいと願うあなたへ―』
TrymenT『TrymenT ―今を変えたいと願うあなたへ―』OfficiaL WebsitE

ビジュアルノベルという言葉から連想されるシナリオ, 原画, 背景, 音楽のどれも素晴らしく、クリエイターの個性が出ている。前編とはいえ3,500円で購入できることに驚きを隠せない。

また、ノベルゲームをプレイしたことのない友人に薦めやすい価格帯であるのも嬉しい。

AlphA編発売当日に拙いながら記事を書いたが、最近になって感想を書いていないことに気が付いた。NaNaKoさんの企画もあり、TrymenTを友人に宣伝する良い機会なので軽く感想を書くことにした。

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グラフィック

キャラクター

当初はキャラクタービジュアルの大幅な変更に賛否両論であった気がする。

私個人としては「美少女ゲーム」という分野にどっぷり浸かっている訳でもないので違和感はなかった。

TrymenT -AlphA- 発売前にRe:LieFはプレイしたのだが、今作は等身の変更のせいか登場人物がより年齢相応になった気がする。学園が舞台であるが、登場人物の多くは社会人であることから寧ろ適当であったようにも思える。

オーバーなリアクションの立ち絵はなくなったが、差分が多いおかげで感情表現の幅は負けていない。こちらの方が難しい芸当であるのではないか。

背景

背景は本作品の象徴であると感じるほど美しい。実際にそうであるのだと思う。

また背景が動く。自然に壮大にここぞという場面で動くのだ。(車内のシーンも窓の外が動いていて驚いた。)

自分の執筆能力では表現できない。SNSでも「ヤバい」「すごい」といった曖昧な感想しか出来なかった。これは実際に体験してほしい。

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音楽

本作の音楽は前作と同様、ピアノ主体になっている。

曲数としては特別多くはないが、場面に合わせて様々なアレンジが施されている。

花火シーンでのEtudE -AubadE-の入りは見事だった。まるで映画のワンシーンのように感じられた。

シナリオ

構成

正直、当初シナリオ構成は難解で戸惑った。時系列が前後するため2周目にも新たな発見があり楽しめたが、1周目は頭の中で整理するのに何度もオート解除をした気がする。

視点

前作は一人称視点であったが、今作は基本的に三人称視点で展開される。地の文は情景描写が主となり短文が多い。

テンポは良く読みやすいが、このような形式に慣れていないせいで感情移入はしづらかった。登場人物の人となりや心情を汲み取ることが難しくなっている。もしかしたら「読者の感性を尊重する」といった意図があるのかもしれない。

会話

登場人物の発言が小難しいといった印象を受けた。トライメント計画の意図的に仕方がないところではある。

各個人が信念や目標, 思想を抱いているのに対して、自分が何とも惰性で生きていることに痛みを感じた。

システム

今作のゲームシステムは面白い。ビジュアルノベルという名を体で表している。

例えばテキストウィンドウ。

文字以外に枠やセーブ/ロード等のメニューが存在しない。ビジュアルを最大限に生かすように設計されている。

そして右クリックで表示されるメニュ―には『GraphiC』『LibrarY』といった見慣れない項目がある。

GraphiCはテキストウィンドウの非表示だ。否定ではなく肯定的な表現からも制作側の拘りが見える。

また、LibrarYは登場人物のプロフィールだ。この作品は登場人物が多いことに対する細かな気配りがされている。

WeB分野を学ぶ者として、このようなデザインを見るのは楽しくて仕方がない。

だが反面に惜しいと感じる部分もある。

ひとつは『GallerY』。

TrymenT -AlphA- GallerY

分類がされていないために多少探しづらい部分がある。前作は【背景】という項目が存在したが、今作では背景CGが『GallerY』にないのが残念だ。

Re:LieF GallerY

また、差分CGが見つからないことがある。一部CGは本編でしか見られない。まあ周回するからいいのだが、システムとしては納得できない部分である。

加えて差分CGの有無が確認しづらいといった問題もある。

下の2枚のCGのメニューは同じように見えるが、2枚目の画像はウィンドウ右の【>】から別の画像に切り替えられる。外観では判断できないのが意外と辛い。

グラフィックを生かした設計思想であるがゆえに惜しい。ゲームウィンドウのタイトルに「TrymenT -今を変えたいと願うあなたへー AlphA – Ver.1.0.0」とある。

後々改善されることを願うばかりだ。

好きな登場人物

今作で一番好感を持てた登場人物は喜羽正明。

真面目で素直だがエアリーディングができない性格でありながら、反省を生かし成長しようという志に惹かれた。

星乃の車いすを押すシーンの変化が印象的。

肘置きに手を置いていることからも星乃の不安が読み取れる

喜羽の心掛けが垣間見え、星乃も腕を下ろしている

喜羽が登場すると話が上手く進む、周りとの関係性も読んでいて楽しい。

 

逆にモヤモヤしたのは新田司。

前作では何でも卒なくこなす優等生である一方で、目標を持てず、今を変えようとしている人々に憧れる姿に共感できた。しかし、今作ではそういった深堀がないためか、少年時代の描写が特筆して大人びているからか、普通の青年というイメージが持てず「高みの存在」という印象を受けた。

OmegA編への期待

登場人物も大幅に増え、物語の風呂敷も大きく広げたTrymenT  ―今を変えたいと願うあなたへ― AlphA編。

後編となるOmegA編でどのように回収していくのか大変待ち遠しい。

アルバイトもなく金欠ではあるが、給付金に期待してアクリルオーナメントを購入してしまおうか。

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