昨今の講義形式は自宅での動画視聴。後期もこの形式らしく不安は募るばかりだ。
それはそうと、今回は選択問題についての小言である。出席確認に小テストがあるのだが、意外と面白い部分を見つけたので紹介する。
【適切なもの】はどれか?
以下のような形式の問題があった。(選択肢の順序はランダムであり、A〜Cで適切なものは最大で1つとする)
A
B
C
この中にはない
4つ目の選択肢「この中にはない」を注視しよう。
「この」は何を指すか。選択肢に順序がない以上、多くの人は選択肢全体のことであると解釈するだろう。
=「この中に(適切なもの)はない」
=「この中は全て適切でない」
=「選択肢は全て適切でない」
これは、正答が存在しないことを意味している。
「正答が存在しないこと」が【適切なもの】であるならば、それが正答となり仮定に矛盾が生じる。
背理法から「正答が存在しないこと」は【適切でない】と解釈するのが妥当だろう。
つまり、選択肢「この中にはない」は正答と成り得ない。
この場合、選択肢 A〜C の中に【適切なもの】がなければ問題が破綻する。
以上から「この中にはない」は 【選択肢 A〜C が正答でなかった場合に選択させたいもの】として不適切であることが分かる。
【適切でないもの】はどれか?
前節の問題文の【適切なもの】を【適切でないもの】に単に置換えてみよう。(A〜Cで適切でないものは最大で1つとする)
A
B
C
この中にはない
所謂「誰かが嘘をついている」問題だ。
読み解くと違和感を感じるに違いない。
結論から言ってこの問題も破綻している。
そもそも「この中にない」の解釈はどうなるか。
=「この中に(適切でないもの)はない」
=「この中は全て適切である」
=「選択肢は全て適切である」
と置換する。
選択肢「この中にはない」が【適切でないもの】であるならば、「選択肢は全て適切でない」ことになり矛盾は生じない。
逆に【適切でないもの】でない(適切なものである)ならば、選択肢 A〜C の中に【適切でないもの】が存在することになり、「選択肢は全て適切である」ことに矛盾が生じる。
つまり、問題として成立させるならば「この中にはない」が正答となる必要がある。選択肢 A〜C は【適切でないもの】に該当してはいけない。
前節と異なり、この選択肢の存在が正答を確定させる。出題方法として不適切であることは言わずとも伝わるだろう。
しかし面白いことに、問題文に「全て選べ」と追記するだけで選択肢の幅が生まれる。この場合は手っ取り早く修正出来てしまうのだ。
あとがき
今回紹介した問題は
といった意図で作成されるのだろう。
しかし、脳死で選択肢のひとつにしてはいけない。
解釈の幅を持たせないためにも抽象的な選択肢を用いてはいけない。
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