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【映画感想】死の匂いがしない方のサマーゴースト

レビュー

上映時間40分の短編アニメーション映画『サマーゴースト』を観てきた。

想像以上に丸い。

作品自体は挑戦的だけど物語が尖ってない。

一言で表すなら『劇場版インディーアニメ』なんだけど、制作のエゴエゴしい部分が少なくて物足りない。

商業アニメーションというよりインディアニメを彷彿とさせる画作りに焦点を当てているのは伝わって面白い分、掲げるテーマを薄くした感じがした。

背景とか色味とか凄い部分も多いんだけど、背景美術はインフレが激しいし制作規模に依存してそうで触れにくい。

作品自体が尺の制限や早いテンポから間を詰めまくるところがPVっぽく、『間』がなく場面が切り替わっていく。短編であることも相まって予告編で本作品を綺麗に描いてしまい、本編を観たからこその満足感や驚きも少なめ。

もちろん強いシーンもあって、「横向きに乗るエスカレータ」と「サマーゴーストの初登場」「地中を水に見立てた水と空の境目」「花火を踏みつける」シーンが凄く良かった。飛行場の構図はかっこいいし、音の緩急と線香花火の映えが気持ちいい。

惜しむらくは「好きなシーンは?」と聞かれると多くが公開されてる冒頭5分や本予告に収まってるところ。未公開部分でこれ以上にインパクトが強かったシーンが出てこない。

主要人物は4人だけど、友也と絢音の関係性の比重が大きく、あおいと涼があまり絢音と関わってこない。友也・あおい・涼の友好描写も少なく親密に感じなかったからか、「ここは俺に任せて先に行け」とばかりに一人ずつ減っていくシーンは笑いが勝った。急ぐ必要性を感じなかったというのもある。

絢音のささやき声はゾクっとして良かった。一線画した死生観を持っているところが好みだったので、無邪気さの残るお姉さんキャラになったのは残念だった。

テーマに対して死の匂いがしないのも日和った感じがする。

主人公の友也は「死にたい」というより「死後に興味を持っている」程度に思えて闇が浅い。なんで死のうとしたかよく分からないけど、死を象徴する花火を踏みつける演出はめちゃ良かった。

あおいは人物説明と周囲の描写に乖離を覚えた。自分に無関心ならわざわざいじめないし、屋上にバケツ持って先回りなんてしないんだよ。いじめの物証が残ることして問題にならなかったり保健室が役割を果たしてない点は『お約束』として飲み込めても好きな味じゃない。なんか彼女の周囲だけ世界観が違う。

絢音に限っては死体描写がなかった。綺麗だけど。

最終的にペンダントを絢音母に届けたあたり死体発見に警察が介入してないので、もしかしたら死体は埋め直してるし、事故を起こした犯人にお咎めはないし、絢音の死は公にならず行方不明のまま。こういった綺麗に見えて倫理観のない皮肉は好き。

冒頭でミスリードさせて最期に回収する流れも凄く綺麗でエンドロールを観ながらしみじみした。ふと覚めると絢音は現物に干渉できないから自分探しを諦めており友也に助けを求めたのが本筋だったから、「涼は線香花火持てるんかい」と疑問が浮かんでしまって不完全燃焼。小骨が残って「伏線回収が!」と手放しに語りにくい。

映画公開前からコミカライズ版が始まっていて、そっちの方がディティールがあって死の匂いがプンプンしてる。サマーゴーストの初登場シーンで「変な名前で呼ばないで」と絢音が返したので好きになった。無料公開し続けてくれるなら個人的にこっち推しかもしれない。

音楽はテーマ曲がクソ強くて「テテテテテーン♪」が頭の中に残ってる。ずっと流れてる。物販戦略としてはBD特典になるだろうか。悩む。loundraw監督が十年後巨匠になったとき、流通数少なくて完品がプレミアつきそう。悩む。

映画『サマーゴースト』は

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